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2019.04.27
永久凍土とマンモスの国「サハ共和国」へ

1日目 成田→ウラジオストク→?→ヤクーツク

2019年1月30日、成田空港で11:00待ち合わせ。総勢で15名を超える大所帯。
6月に日本科学未来館で開催される「マンモス展」の展示物リサーチと撮影が今回の目的です。
顔合わせと打ち合わせ、軽食を済ませてからバスラウンジへ向かいます。まずはシベリアの玄関口ウラジオストクへ。成田から3時間弱!意外とすぐなものです。日本から一番近いヨーロッパ。

バスを降りると、目の前には想像していた半分くらいのプロペラ機。輪ゴム飛行機かな?
抜群の臨場感とともに飛び立った機体は一路日本海へ。眼下にはアルプス、富山湾、能登の絶景が広がります。見渡す限り銀色の山々、複雑な海岸線地形が広がって素晴らしく美しい。ギュッとコンパクトな島の中にこれだけ変化に富んだ地形。これこそまさに日本の多様性の根源。

機上では「マンモスへの旅」という本を読みながら。1996年に書かれたこの本は、同じく北シベリアへマンモス発掘に向かった日本人チームの行程とノウハウ、そして「永久凍土からマンモスがまるごと一体もしも発掘できてしまったら」という妄想の元、シベリアから日本の研究施設まで運ぶプロセスをまとめた本です。「過去を知ることは未来を知ること」「マンモスは夢。人を熱く動かす何か」などの言葉が心に残りました。マンモスという生物は時代を超えてなぜか人類のハートを掴み続けているのです。なぜか…。

大陸が見えてきた頃、飛行機が揺れ始めます。上下左右、ここ最近では一番の揺れ具合。上半身から変な匂いのする汗が出てきています。
小さい飛行機はやっぱり苦手。

揺れが収まった頃、気がつけば窓の外にはだだっ広いシベリアの大地が見えていました。


体力ゲージがだいぶ削られたところでウラジオストク到着。タラップから外に出ますがそれほど寒い感じもしません。このとき気温はマイナス1℃。みんな、だいぶ用心して厚着してるので、このくらいでは問題になりません。

ヤクーツク行きまでのトランジットは3時間以上あるのでうまく時間を潰さなければなりません。
ひとまずフードコートに身を落ち着けて、フード店を物色。でかいピザがうまそうだったので温めてもらい、グロールシュ(オランダのビール)と一緒に購入。カードで会計がかなりスムーズ。ちなみにこの2つで470ルーブル(ピザが300ルーブル、グロールシュが170ルーブル。1ルーブルはだいたい2円弱くらい。)
ピザはパサパサ気味であんまり美味しくなかった。大きいんだけど。グロールシュは好物なので溜飲を下げる。
腹ごしらえを済ませると、みんなは荷物の整理や着替えを始めます。
ヤクーツクに到着するとタラップから極寒の世界スタートなので、ここで防寒具を手持ち荷物に詰め直すのです。あらかじめ防寒ブーツを履いてしまう人も。
ただし到着までの機内はめちゃくちゃ暑い。汗だくで飛行機を降りたらそれこそあっという間に氷の像になってしまいそう。
なんとか時間をつぶし、バスで飛行機へ向かいます。成田→ウラジオストクより明らかに人数は多い。100人くらいかな?
バスを降りてタラップを登って機内に入るまでが長かった。人数が多いのと、みんな荷物や防寒着がかさばるものだから一向に列が進まない。そして吹き付けるシベリアの寒風。
こ、これはさすがに寒い。みるみる体温が奪われていくのが体感できました。これでもマイナス3℃くらいだという。ここから40℃も下がるって、まったく未知の領域です。

オーロラ航空機内。
すぐに照明は落ちておやすみモードに。30分後くらいに再点灯して、ドリンクとランチボックスが配られます。夜にパンはちょっとなあという感じなのですが好奇心には勝てず口にすることに。
スモークサーモン(眼が覚めるしょっぱさ)とオリーブ漬け(想像する通りの味)、キュウリとトマト(ドレッシングはない。そのままボリボリ食べてカブトムシになった気分)、パン(歯ごたえ抜群。なんでこんなに固いんだろう)、マドレーヌ(食べきれなくて非常食の仲間入り)。あとは一緒にホットコーヒーをもらいました。
食べ終わると機内の照明は再びOFF。残り30分くらいでヤクーツクに到着です。さてマイナス40℃とは一体どんな寒さなのか…。ちなみに慣れるまでは深呼吸ゼッタイ禁止。一瞬でも肺が凍りついて死んでしまうそうです。
到着の喜びのあまりテンションが上がりみんなでふざけてゲームオーバー、みたいなのは避けなければなりません。とにかく厳戒態勢です。

さあ、まもなく到着。
胸は高鳴ります。

ヤクーツクの明かりが見えてきた!でもやけに靄がかってるなあ…と思っていたら、CAが出てきて客席に何やら報告しています(ロシア語なのでまるでわからない)。悲鳴をあげる現地客たち。なぜか泣き始める女性。機体も再上昇を始めました。あっ、これは…

通訳の方が教えてくれたところ、「濃霧でヤクーツク空港への着陸見送り。近くの予備空港に降りていったん待機」とのこと。。まったくもって一筋縄ではいかないものです。

そこから1時間、よくわからない空港に着陸。周りには何の明かりも見えません。だだっ広い空港の向こうは深い暗闇で、うっすら白い針葉樹のシルエットが見えるのみです。えっと、どこですかここ???

しかしどうすることもできません。促されるまま外気温マイナス34℃のタラップからバスに乗せられ、収容所みたいな待機所に全員詰め込まれました。催眠ガスとか出てきそうな。

うなだれて待つこと数十分、再チャレンジする的な主旨の放送が。再出発した飛行機は予定から遅れること3時間、ヤクーツク空港にやっと到着できたのでした。無事に着陸できたところで機内では拍手の渦。
ダウンジャケットを着なおして、飛行機から外に出てバスに乗り込みます。
タラップに降りると、たしかに寒い!温度計を見るとマイナス45℃!先ほどのマイナス45℃とは明らかに異なる寒さです。
空気が冷た過ぎて息を吸うとすぐにむせてしまいます。なので、深呼吸はむしろ頑張ってもできない。
代わりに鼻から細々と息を吸い込むのですが、鼻の穴の中があっという間に凍っていく!
…といっても全く痛くないので、あのパリパリ感は是非いろんな人に体験してほしいです。

あと、外気にさらしてiPhoneをいじっていると、だいたい15分くらいで使えなくなります。
寒さのせいでバッテリーが動作しなくなるらしく、体温で少し温めるとそのうち戻ります。
これに備えて写ルンですも持参。


空港からはバスに乗り込みヤクーツク市街へ。
霧に包まれた極寒の極地。そこに時折ぼんやり浮かび上がり、近づいては消えていく車のヘッドライト。
あまりにも幻想的で、夢の世界にいるかのような…。そして、こんなところにも人は住んでいるのです。

レーニン広場の近くにある「Hotel Polar Star」が滞在中の宿。日本でいう地方の大型ホテル(結婚式場とかついてるとこ)みたいな感じでしょうか。
スケジュールがだいぶ押してしまったので、3〜4時間の休息の後、すぐにマンモスミュージアムへ出発です。


この先、僕たちが見たものは…
ぜひ6月からのマンモス展でご覧になってください。

この日のために買い揃えたパイロットキャップ。耳当て付き、動物の毛や皮製のものがマストとのこと。凍傷で耳がなくなるのは嫌だったので奮発しました。

成田→ウラジオストーク 機内より。立山連峰が美しすぎる。

ウラジオストーク着。17時過ぎくらいでまだ明るい。

空港ではサーモンとかイクラが売られています。そういえばイクラはロシア語が語源だったっけ。魚の卵という意味。

ヤクーツク行きの旅券。

ヤクーツクを素通りして1時間、最寄りとされる空港へ。言葉もわからないし、外にいたら死ぬだろうし、不安しかない。

有無を言わさず倉庫みたいなところに入れられる。言われるがまま。

この収容所感をご覧いただきたい。うなだれる乗客たち。深夜2時ごろである。

何にもなくて、地方のバス停みたいな空港。やることなくて外を眺めると深い深い闇。

数々の苦難を乗り越え、到着したヤクーツク空港。霧が深くて視界が悪い。ガス灯みたいなぼんやりした光が幻想的な街。

くたびれ果てた乗客たちはいそいそと街に消えていく。

濃霧の中に現れては消えていく街灯やヘッドライト。サイレントヒルみたい。

翌朝7時ごろ、ホテルから街を見下ろす。すごい国に来たなあ。こんな中でもバスはひっきりなしに来るし、人も街を歩いている。極地の生活がある。

街のあちこちからは煙が上がっている。おそらく地域暖房みたいなものだと思う。

外にいればまつ毛も髪の毛も凍っていく。じっとしていると外にいるのは15分が限界かも。