POWER OF SPRING温泉力をもらいに

2017.06.10
日本一の熱量「小浜温泉 旅館 國崎」

数ヶ月前に福井県の小浜を訪れたばかり。ここ長崎県にも小浜という地名がある。
長崎空港から高速バスで1.5時間ほど。
島原半島の西側に小浜、雲仙普賢岳を挟んで東側が島原。
島原といえばいつか歴史の教科書で習った天草四郎、隠れキリシタンたちの「島原の乱」だ。
半島に住む人々の半数以上が反乱に参加したという。

豊穣な海・橘湾に面する小浜温泉は、海辺の温泉街の様相。
背後にある山のあちこちから湯けむりが登っているのが見える。
別府の山々を思い出す。雲仙普賢岳が生きている証拠だ。

温泉街から一本山側に入った細い旧道沿いに、「旅館 國崎」はある。
長崎県唯一の「日本秘湯を守る会」会員宿だ。
積み重ねた年月を感じさせるやや鄙び系の店構えだが、それがいい。
ちょっとした絵画や民芸のあしらいが心を和ませてくれる。
飲泉用の湯口もあるのが嬉しいが、泉温が高いため柄杓で飲むのは少し難易度が高い。

こちらの宿は3つの貸切風呂が名物である。
二階の客室が並ぶ廊下に、使用中の貸切風呂を知らせる信号システムがあった。なかなか便利だ。
100〜105度に及ぶ高温泉は、熱交換により適温まで下げられて源泉100%かけ流しで湯船に投入されるため、劣化は最小限。
ちなみに小浜温泉は「日本一熱量の多い温泉」として知られるようです。

特に気に入った貸切風呂が、どっしりと重量感ある「ひのき風呂」。
木の肌触りが心地よく、しばらく浸かっていると湯に溶けた二酸化炭素が肌に泡付いてくる。
フレッシュな温泉の証拠だ。
玄関脇にある「石風呂」はこじんまりとしているが空間の作り方がうまく、隠し部屋にいるようなワクワク感。
ちなみにこの石風呂のみ、帳場が近いからか浴室内から冷酒をオーダーすることができる。
とはいえ最近は昼にアルコールを飲むと一日ダレてしまうので、昼酒は自重している。
とはいえ酒呑みには喜ばしいサービス。

食事は長崎ならではの食材を楽しめた。
「がんば」はシロサバフグの意だが、刺身と煮付けでいただいた。
厚切りでコリコリとした身質は全くトラフグやマフグに劣らない。むしろ味わい深く印象的。
そのほか豚しゃぶがかなりうまかったか。もちろん橘湾の恵みは総じてレベルが高いものだった。
手づくりの箸置きがほのぼのとして心を和ませてくれる。


滞在を終えて、雲仙普賢岳を越えて島原へ。
島原では老舗定食屋で「皿うどん」「具雑煮」と郷土料理の甘味「かんざらし」をいただいた。
気がつけば長崎滞在中は麺類ばかり。
大丈夫だろうか。熊本ラーメンが控えているというのに。


有明海をフェリーで抜け、熊本へ移動する。

歴史ある温泉地「小浜温泉」。かつては「きちん(木賃)宿」と言われた宿泊代を薪で支払う宿が存在していた。

訪れたのは間も無くこどもの日を迎える頃。海辺では鯉のぼりが気持ちよさそうに泳いでいた。

街のあちこちから湯煙が上がっている。こちらは高温で湧いた温泉を葦の枝にまぶして温度を下げている小屋。

地元の歴史資料館。時々イベントで湯柱を立ち上げるらしい。

「日本一長い足湯」なるものが存在する。「ほっとふっと105」。名前の通り105メートルの長さだ。

国道沿いには何軒も歴史ある宿が立ち並ぶ。構えもしっかりしていて、どこも品格を感じさせる。

地獄蒸しのレストランがあった。大分の鉄輪温泉を思い出す。好みの食材を買い求め、店員さんに蒸してもらうスタイル。

レストラン以外にも、公共の地獄蒸しスペースもあった。近くの売店で食材を買い求め、自分で蒸す。「使用中」「空き」の札が愛らしい。

街を歩くと炭酸泉が湧出しているスポットが。入浴はできないが手湯はOK。

製材所に住まう猫とのささやかな交流。

水の豊かな土地のようで取水所を複数見かけた。

「旅館 國崎」に到着。こじんまりとしてはいるが、美しく整えられた面構え。

貸切風呂その1。海と山の風景が見え、風が吹き抜ける心地よさ。夜はスターウォッチングにぴったりだ。

貸切風呂その2。ヒノキ張りの湯船は素晴らしい浴感。一番お気に入り。

貸切風呂その3。一坪風呂といった様相だが、冷酒オーダーができる。隠れ家のようで結構好きかも。

「がんば(シロサバフグ)」のお造り。歯ごたえ、旨味バッチリで記憶に残る美味しさ。

「ちぬ(クロダイ)」の兜煮。真鯛より磯のニュアンスが強いがこれはこれで好き。

國崎の近所にあった有名なちゃんぽん屋さん「大盛食堂」。

小浜ちゃんぽんは長崎三大ちゃんぽんの一つだそう。あっさりで優しい。今まで食べてきたちゃんぽんの中では一番好きかも。

島原に移動し、商店街の中にある「銀座食堂」へ。

島原の郷土料理といえば「具雑煮」。白いのは餅。お腹いっぱい。

「かんざらし」。シロップに小さめの白玉がたくさん沈んでいる。美味しいが量を食べるのは困難。