Facebookのタイムラインをぼんやり眺めていたら、千倉の寿司店・大徳家の大将のポストに思わず手が止まった。
どうやら千倉に新しい飲食店がオープンしたらしく、研修に伺ったそうだ。が、その写真に映っているのは南房総らしい海辺の町のユルくカジュアルなレストラン…ではなく、料理番組のスタジオセットのようなゴージャスな食材ディスプレイが背景に見切れる、まるで赤坂で要人たちがお忍びデートや接待に使うような重厚すぎる異次元空間だった。
「料理、器、サービス、設備、色々勉強になりました」「『美味しかった~』とみんなが自然の笑顔」と、尊敬する大徳家の大将の言。
「何がどうなって千倉にこんなお店が…」とたいへんな興味をそそられて、毎年恒例、8月上旬に道の駅・潮風王国で開催される「千倉サンバ」とタイミングを合わせて伺うことにした。
(ちなみに千倉サンバは学生時代に仲間たちと一緒に立ち上げからお手伝いさせてもらったイベントで、今年でなんと15回目。苦楽の記憶が数え切れないほどに詰まった、まさに僕らの青春の塊とも言える催しです。)
千倉で大変人気な温泉宿「夢みさき」から誕生した別邸「夢咲」。そこに件のシアター型進化系鉄板焼なるものがオープンしていた。店の名は「BAKNOS(バクノス)」。
どうやら「夢を追う人々が集まる場所」がネーミングの由来のようだ。
17:45からの「第一幕」を予約。※5分前集合
この日の観客は僕たちを含めて2組4名。カウンターの正面に通されます。スタッフは5名いらして、客より多い。万全の体制だ。もはや逃げることはできないだろう。
プロデューサーである夢咲案内人氏以下ソムリエ、シェフなど出演者のみなさんのご挨拶のあと、「では開演です!」の合図とともにぱっと照明が落ちる。わー。
これから何が起こるんだとじっと固唾を飲むなか、おもむろに鳴り響く「料理の鉄人」のテーマ曲。わー。わー。
奥の壁が電動でウイーンと上がっていく。その向こうにはライトアップされた食材たちが神々しく登場。
房州えびやハタ類が泳ぐブルーにライトアップされた水槽、スポットライトを浴びるシャトーブリアン、房総の野菜たち。気がついたら口が開いていた。わー。わー。わー。
夢咲案内人氏が日本各地を飛び回って足で集めてきた食材は間違いなくどれも一級品。一皿ごとに丁寧にストーリーを紹介して頂ける(料理番組に出てるみたいな気分)ので、食材や調理の話が好きな人は間違いなく楽しいと思います。目利きの力すごい。
すべてを紹介すると驚きが減ってもったいないのでいくつかだけメニュー紹介。(写真を参照)
特筆したいのが、この日お願いした「最後の晩餐」コースで中盤に出てきた「軍艦の極み」。ウニ、イクラ、キャビア、黒トリュフが乗った軍艦なんだけど、海苔ではなく霜降り牛肉で巻いてある。あまりにも破壊力に満ちたビジュアルだ。
頬張ると、僕のチンケな既成概念はいとも簡単に崩壊し、理性や理屈なんてものは霧散した。まったく味の解説になっていないが、口の中では、例えるなら宇宙遊泳をしているような時間であった。宇宙に行ったことはないが。鼻血もよく出なかったと思う。
20年以上前、料理の鉄人ファンだった人にはクスリとさせられるオマージュ演出が多く、いちど体感してみて欲しいです。そしてどんなだったか、感想を、酔っ払いながら確かめ合いたいです。
みなさまにおかれましても、お腹を空かせてぜひトライして頂きたい。
あ、普段、肉類をあまり食べない人は事前にご相談差し上げるとよさそうです。
夢咲案内人、圧巻でした。
ありがとうございました!