西伊豆はなかなかアクセスが大変なのですが、とても好きなエリアです。
その理由のひとつがこちらの温泉宿。
自家掘削した温泉は香ばしい硫黄の香りが漂うアルカリの湯。飲泉もできる。
何より「100%源泉脈掛け流し」を謳う温泉の体験デザインがすごい。(ちょっとマニアックな話になります)
まず、温泉は空気に触れると酸化が進むから、なるべく空気に触れさせたくないものです。こちらではご主人が自ら考案したヒートポンプ式の冷却機で、高温で湧くお湯を空気に触れさせずに冷まし、浴槽の下からお湯を注ぐという徹底ぶり。地の底を巡っていた状態に近い、フレッシュでピチピチなお湯に入れるわけです。
次に部屋数が限られてるから(たしか1日8組でいっぱい)、一人あたりのお湯の量がすごく豊富。山登りの後に立ち寄る日帰り温泉なんかだと、入浴客の汚れが気になったりするものですが、そんなことは全くありません。しかも掛け流しにされてるから、浴槽のお湯を独り占めしているに近い感覚です。混浴の露天大浴場を含め7つくらい浴槽があるんだけど、他のお客さんとあまり会うこともありません。
温泉好きが憧れる要素がことごとく満たされた場所。
しかし、フレッシュなお湯を提供するためのお手入れの手間やお客さんの受け入れ数に限界があることを考えると、陰は途方もない努力と忍耐があるはずです。
「こういうものがあるべきだ」という強い理想とビジョンを、まるごとかたちにしてしまった凄みを感じずにはいられません。
一代でこの世界を築き上げた主人は、僕にとって間違いなく温泉業界のヒーローです。