FOOD FOR CREATIVE頭を遊ばせる時間

2019.09.28
大津百町「自然坊たなか」で長月の一献

豊岡から2時間半、京都経由で大津へ向かった。
京都から大津まではJRで9分、あっという間に琵琶湖のほとりだ。この近さ、僕もそうだったけど意外と気づいてない人も多いんじゃないだろうか。

大津百町は東海道五十三次で五十三番目の宿場町で、終着地の京都を目の前にかつては大層賑わったという。少しずつ保存改修が進められてきたという町家が並ぶ旧東海道は、電線も地中化され歩いていて気持ち良い。マンションは通りから10mくらいセットバック、ファサード側をエントランスと集会所を兼ねた町家にして顔立ちを揃えていた。いろんな工夫の形跡が見えて気持ちがいい。

町家を改修した商店街ホテル「講 大津百町」は安定の自遊人クオリティ。エリア内にいくつかの町家を改装していて、食事は基本的に百町にある商店で…というディスパーストスタイルだ。
泊まったのは「茶屋」という町家の一階。コンパクトだけどアメニティに不足はないし、安心できる空気感と清潔感。共用部に飾ってあった地元ご出身の写真家・吉田信介さんの作品がかなり好みで、たぶん次に来たら買ってしまうと思う。

夕食を頂いた自然坊たなかは京都・草喰なかひがしの流れを汲む月替わりのお料理で、こちらも素材の扱いに発見が多く大変に楽しい体験。月ごとにおまかせコースの内容が変化していくそうだ。
カウンターのとなりには大津百町で生まれ育った常連さん。琵琶湖の歴史、商店街の世間話などいろんな話を聞かせて頂いた。ずっと昔から、大津は日本中から人と物が集まる一大都市だったと。

ざわざわする京都から少し離れて、大津に泊まってみるのもなかなか面白い。
発見がたくさん。

大津百町は旧東海道、京都に至る直前の宿場町。琵琶湖のほとりということもあり、大変多くのひと・ものであふれかえったそうな。

サインにもデザイン的配慮が行き届いる。トータルでコーディネートされているのは見ていて気持ちいい。

「講 大津百町」のファサード。のれんが静かに商いの表情をつくっている。

レセプション棟「近江屋」のロビーラウンジ。ここで宿泊の手続きを行う。

セレクトされた本もあちこちに。箱根本箱とのノウハウの共有がされている感じ。

実際に宿泊した「茶屋」のラウンジ。コーヒーやハーブティーはフリードリンクで、夕方からはビール、日本酒も提供されていた。

吉田信介さんという作家さんの作品。静謐かつ神秘的な琵琶湖の風景の切り取り方がすばらしい!

1階の通りに面した部屋。コンパクトだけど必要十分。

「自然坊たなか」のエントランス。座席はカウンターで8席程度。予約しないと入れないと思います。

前菜の盛り合わせ。芋の葉っぱで包んだプレゼンテーションが楽しい。右奥に隠れたスモークしたサバ、右手前のぶどう、ほおづきの中に入ったマイクロトマトが美味しかった。

焼き茄子の椀物。炭火の香りが鼻をくすぐる。白味噌仕立てでなんともほっこりな味わいに。

笹に包まれて出てきた焼き物。

笹を広げると出てきたのはニジマス。滋賀県北部の清流・醒井で育てられたものだそうだ。フワフワ。

カツオのたたき。白いのは凍らせた大根をすりおろしたもの。いくらも添えて、不思議とぴったり合った味わいになって驚き。

近江牛。きのこたっぷりのソースと白髪ねぎでさっぱり頂けました。近江牛は但馬牛、飛騨牛と並んで好きな牛。

食事の途中から炊き始めていた釜炊きのご飯。途中では「煮えばな」も出していただきました。スピード勝負だったので写真はなし。

「卵かけご飯もできます」という誘惑に抗えなかった結果。いくらの上にふりかかっているのが粉醤油。この美味しさは忘れられない…。

最後の甘味、アイスクリーム。上に乗っかってるのは巻きせんべい。