PIECES OF FUTUREアイディアのかけら

2020.06.11
ブックチャレンジ2020

「海流の中の島々」
ヘミングウェイの遺稿。たぶん中学二年生の頃、バナナフィッシュに出てくるブランカ(主人公の師匠ポジ)が読んでるのをかっこいいなあと思い手にとってみました。男の美学()とかダンディズムとかいうのでしょうか、ひねくれた当時の僕はたいへん影響を受けまくりました。今に続くツッコミどころだらけの人生、不治の中二病のはじまりとなった本です。

「食べる/知る/遊ぶ/育てる/作る/争う/生きる/着る/住む/交わる」
1979年発行とちょっと昔のシリーズ本です。人間が生きていく上で避けられないいくつかのテーマに対してジャンルをまたいだ識者たちが激論を交わす熱量たっぷり(熱すぎる!)の対談本。時代は変われどそんなに悩んでることは変わらないなあと思えます。が、現代で、こんなに厚みのある思考のプロセスをたどれる人はどのくらいいるんだろう。本当に知りたい答えはYahoo知恵袋には書いてない。

「男の民俗学」
遠藤ケイさんの代表作。日本各地に細々と残る生活文化や生業の姿をケイさんのイラストと事実を真っ直ぐに伝える文章で記録しています。自然と人間がもっと近くにあった頃の価値観や生活の知恵。現在進行形で途絶えそうなものだらけだけど、「自然と人間が近くにある」というのは現代でも最も魅力あるコンセプトの一つ。先人たちが気が遠くなる時間をかけて紡ぎ上げたものに学び、最新のテクノロジーや社会性・倫理観を取り入れながら、新しい自然とのつながり方を探していければいいと思っています。自然との人間の距離感をはかるに、とても学びの多い本だと思います。

「Sの計画 木の建築ルネッサンス」
木の建築家であり茶人でもある太田新之介さんの本。日本文化の3つの柱「皇室」「日本仏教」「古神道」を紐解きながら、日本人が千数百年も前から続けてきた茶事の営みの本当の意味するところに触れています。日本文化の成り立ちを、五感をゆうに超えて六感・七感で体感できるのが茶事。太田さんには幾度か茶事にもお招き頂いていて、そこでの体験はまさに「茶事は究極のコミュニケーションツール」と呼ぶにふさわしいものでした。人との交流がこんなにも嬉しくうるわしいと思えることはない。
その時の記事はこちら。
「茶飯釜の茶事」三島・樵隠庵にて
http://thoughts.jp/japansense/251/

「好きなことはやらずにはいられない 吉阪隆正との対話」
建築家・吉阪隆正氏のエッセイ集。何より心を打たれたのは「1+1=1」というタイトルのもの。今の時代、誰も彼もが「1+1」のイコールの先を100とか10000にすることに躍起になっているけれど。大事な人やものごと同士を幸せに融合させる、いわば「1+1=1」にする空間や仕組みをつくることを大切にしていきたいよね、という、ひとりごとのようなその一文がとっても素敵なのでした。

「旅をする木」
言わずと知れた星野道夫さんのエッセイ。読むたび、心に風が吹くような本です。どこかへ旅に出たくなる、いつかのあの人に会いたくなる。

「パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集」
写真家・飯田裕子さんがFacebookで紹介してて知った本。タイトルにもあるように、南海の部族の酋長ツイアビが、島の人々たちに向けてはじめて文明と出会った驚きを演説で伝えた内容をまとめた本です。自然と一体となった生活をはるか昔から続けてきた彼らにとって、文明人の姿はあまりにも多くの矛盾と虚栄を抱えながら生きる滑稽かつ哀れで仕方ない生きものに映ったに違いありません。