座間味島・阿嘉島・渡嘉敷島、そのほか無数の無人島からなる慶良間諸島。
ここに重要な交流拠点をつくるプロジェクトが立ち上がり、僕も参画することに。そこでまずはこの島々の魅力を堪能しなければ!ということで、やや急ぎ足ですが現地2泊で周遊してきました。
慶良間諸島と言えば、ミシュラン・グリーンガイドで二つ星を獲得した「世界が恋するケラマブルー」。多く自生するサンゴが海中のプランクトンを食べ、世界屈指の透明度を誇るビーチとして知られます。2014年、27年ぶりに新たな国立公園として指定されたことを契機に、新しい動きがいろいろ生まれようとしているエリアです。
慶良間諸島へは、那覇泊港から船でのアクセスになります。高速船とフェリーがあるのですが、行きは急ぎだったので高速艇を選択。阿嘉島まで1時間弱の船旅。
この日外洋はかなり荒れていて、波の上を飛び跳ねるように進む高速艇はとんでもない揺れ。次々と倒れていく(トイレに駆け込む)乗客たち。止まらない脂汗。眼を固く閉じて、般若心境を唱えながら長すぎる1時間を耐え抜きました。
フェリーだと2時間かかるけど、そっちの方がいいかもしれない…。(帰りはフェリーに決定)
まずは阿嘉島を原付バイクで散策。
ビジターセンター「さんごゆんたく館」を中心に、ケラマブルーが眩しい北浜(にしばま)ビーチや、慶良間諸島の多島海景観を楽しむ展望台、橋で繋がる慶留間(げるま)島へ渡り、船頭主家(しんどうしゅーやー)と呼ばれる旧家「高良家」などをめぐる。こちらは6月末にすでに梅雨明け。真夏の南国の厳しい陽射しだけど、その分慶良間の海が透き通ってキラキラ輝いている…「世界が恋する」と言われるのも納得。夢に出てきそう。
昼食は座間味村漁協が直営している漬け丼の店へ。メニューは「カジキの漬け丼」「生マグロ丼」「カツオ丼」「セーイカ丼」。それぞれの合い盛りメニューもある。オーダーしたのはカジキ、カツオ、セーイカの「三種盛り丼」。いかにも漁師料理ぽいワイルドさが島っぽくて好き。ちなみに阿嘉島は沖縄でのカツオ漁発祥の地で、かつては「慶良間節」と言われる鰹節が製造され、大変な高級品として取引されたそう。今回の旅では出会えなかったが、現在も細々と製造されている様子。
夕方になり、渡し船「みつしま」で15分、座間味島へ向かう。
阿嘉から座間味への移動は内海なので波は穏やか。傾いてきた太陽が金色に照らす慶良間の海が美しい。
座間味島に到着し、すぐに二日間の宿となる民宿「ダイブイン浜」へチェックイン。
港のすぐ正面、共用のオープンテラスにはたくさんのウェットスーツが干してあり、ダイビング客には重宝しそうな環境だ。
おそらく慶良間に長年通い続けているであろうダイビング客たちと食卓を囲み、いかにも民宿的な夕食をいただく。名前は聞いたことあったけれど未体験だった「スギ(クロカンパチ)」の刺身が出てきた。カンパチよりも少し脂っぽくて、歯ごたえのある食感。そのほか青パパイヤのチャンプルー、豚カツなど。
食事を終えたらオープンテラスでくつろぐ。夜といえどかなりの蒸し暑さ。だけど吹き抜ける島風が気持ちいい。
泡盛をちびり飲りながら、雑談の合間で翌日以降の動きを打ち合わせした。
途中、甘いものが欲しくなって近くの商店へチョコレートを買いにふらふらと出かける。
夜の島は明かりが少なくて仄暗く、少し心細さを感じるような静けさに包まれる。でもところどころ商店や飲食店の明かりが漏れていて、この雰囲気はタイとかカンボジアのアジアの路地裏のようだった。
翌日以降は座間味を代表するビーチである古座間味ビーチ、阿真ビーチ(ウミガメが棲みついてるそうだ)のほか、島内に数カ所ある展望台をめぐる。展望台ごとに景観の雰囲気が変化し、面白い。個人的には崖の切り立った「チシ展望台」が好きだった。
座間味でちょっと困ったのが飲食店。数が少ないのと、どこも割と同じようなメニュー構成なので、長期間の滞在となるとなかなか大変かも。2日目の昼食も、狙っていた店が開店時間になっても一向にオープンする気配がなく、仕方なく諦め、難民化した末に、なんと前日と同じ漁協の漬け丼に…。いや、美味しいんですけどね…。
地元の方のお話を聞いていると、昼はともかく夜は予約をしないと狙った店にはまず入れないそうだ。調べてみると座間味村の1次産業(特に農業)はかなり弱いらしく、食の魅力づくりではなかなか苦戦している様子が浮かび上がる。
最終日はボートで無人島の近くまで連れて行ってもらい、シュノーケリングをした。
水温は27℃、透明度は30mくらい。目の前に広がる色とりどりのサンゴと魚たち。光の波紋が底に映ってキラキラしている。とにかく透明度が高くて、自分が海にいるのか、空を飛んでるのか、時々わからなくなるような不思議な感覚だった。
夕方、帰りのフェリーに乗る。島の人たちが港に集まり、手を振ってくれた。
伊豆七島や小笠原の延々と続く送り太鼓の響きは今でも忘れられない。一艘、ボートで追いかけてくる人たちもいた。甲板の誰かに手を振り続けている。その先に目をやると、彼らに手を振り返しながら笑い泣きしている人がいた。何らかの事情で島を離れる人なのだろう。
フェリーの重い振動を感じながら、夢から醒めていくような寂しさが募っていく。
離島の旅の終わりはいつもこんな気持ちになるけど、この寂しさこそ、また離島を訪れたいと思う理由のひとつになっている気もします。
あまりにも鮮やかだったケラマブルーの美しさは、僕の頭の中に強く焼き付けられた。時間が経つほどに輝きを増していきそうな…。
素晴らしい時間をくれた島々に、これからの仕事で恩返しができたらと思っています。