JAPAN SENSES日本のすがた・かたち

2016.10.23
3年ぶりのお伊勢さん「神嘗祭の伊勢神宮」

平成25年に執り行われた遷宮行事「御白石持行事」。
遷宮の御神宝や錺金物を制作されている森本氏のご縁で参加させて頂いてから早3年が経ちました。
あのときそっと白石を置いたときに見上げた、陽の光を浴びてぴかぴか光る、濃密な木の香りが漂う内宮正殿が現在はどのようになったか。
1年の中で最も重要なお祭りとされる”神嘗祭(かんなめさい)”に時期を合わせて、伊勢の地に杖を引きました。

神嘗祭について調べると、伊勢神宮のWEBサイトにはこのようにあります。
"年間1500回に及ぶ神宮の恒例のお祭りの中でも、最も重要なお祭りが神嘗祭です。
神嘗祭は、その年に収穫された新穀を最初に天照大御神にささげて、御恵みに感謝するお祭りで、由貴大御饌と奉幣を中心として、興玉神祭、御神楽などの諸祭を行います。
さらに附属のお祭りとして、春に神宮御園で行われる御園祭、神宮神田で行われる神田下種祭、秋の抜穂祭、御酒殿祭、御塩殿祭、大祓があり、神宮の年間の祭典は神嘗祭を中心に行われているといっても過言ではありません。"
日頃の生業に対する感謝をあらわすには最も良いタイミングのように思われます。

はじめに宇治山田駅から外宮を訪れました。参拝のルールに則り外宮→内宮です。御白石持行事の際は内宮→外宮だったので、こちらもやっておかねばと。
神宮前の赤福の近辺では「神嘗奉祝祭 祭りのまつり」が開催されており、全国から人が集まり賑わっている様子。例の白装束を纏われた方もたくさん見受けられます。
どんなお祭りなのか調べてみると、神嘗祭に合わせて、日本三大民謡、三大踊り、三大パレードをはじめとする有名なお祭りが伊勢に集い、地元のお祭りを交えて盛大に饗演するとのこと。地元のレストランシェフクラブが出店する屋台も軒を連ねており、大変な賑わいです。

手水舎でお清めをして、外宮神楽殿・別宮多賀宮・別宮土宮・別宮風宮を経て豊受大神宮へ。
ここに祀られている豊受大御神(とようけのおおみかみ)は、天照大御神の食事を司った御饌都神(みけつかみ)とされる神様です。現在では意味合いが広がり、衣食住、広く産業の神様であるとされています。
また、外宮は内宮と同時に建立されたわけではないらしく、内宮の後、今から約千五百年前に丹波国
たんばのくに
から現在の地にお迎えされたそうです。

食に興味があるならば、日々の健康な食生活、未知なる味との出会いを願って参拝されるのも良いかもしれません。僕はそのひとりです。
また、産業の神様でもあるので、よい仕事ができますように、と成願してまいりました。

最後に敷地内まがたま池のほとりにある「せんぐう館」へ寄り、伊勢神宮、遷宮についての展示を閉館まで観て、この日は終了。
既に夕方だったので、内宮は翌日に参拝することとします。


翌朝、7時過ぎに宿を出て内宮へ。
宇治橋の前にはスーツを着込んだ方々がたくさんお待ち合わせされています。一般の正式参拝の方もいるようだし、神嘗祭の行事のひとつがこの日行われるようです。
思えば3年前、内宮は白装束(御白石持行事のコスチューム)で、外宮はブラックスーツでの正式参拝を行いました。7月末の酷暑の時期。クレイジーなほどに暑かったのを今でも覚えています。

手水舎でのお清めの後、内宮正殿までゆっくりと深い森を歩いていきます。
ゆうに直径が2mあまりある樹齢数百年の樹々を見ていると、ここが時空を超えた場所であることが実感できます。2000年前から、同じように人々はこの道を歩いていたのでしょうか。どんな時に?どんな心持ちで?頭の中は既にタイムスリップです。

神楽殿を越えて、少し進むと正殿が森のなかに姿を表します。
3年前の遷宮行事の際はまさに「出来たて」のぴかぴかでした。深い緑の森のなかで、そこだけに射し込む日の光に照らされて、本当に輝いていたのを一生忘れないでしょう。それほどまでに生まれ変わった直後の正殿は神々しかった。完成された(と言っていいのかわかりませんが)建築、デザインの力を感じました。
あのときのように正殿の中へ立ち入ることは許されませんが、現在のすがた・かたちのイメージを頭のなかに描くことは難しくありません。自分があのときに置いた白石も、今もこの奥にあるのです。この正殿のほんの一部にでも自分の力が関われていることに不思議な高揚感を感じずにはいられません。

裏手にある荒祭宮への参拝を済ませて、AM9:00。
外宮へ移動して「御饌(みけ)の朝かゆ」を頂き、今年のお伊勢さんは終了です。


最後に、「せんぐう館」で見つけた言葉を紹介しておきます。原文ママ。


神宮式年遷宮は
持統天皇の御代から
今も継続されています

繰り返すことによって
限りあるものを
永遠なるものにするのです

その発想の源は
稲作を繰り返してきたこの国の
国柄にあるのかもしれません

時代と共に暮らしぶりは変わりますが
国の歩みと先祖の営みは
決して捨て去ることはできません

進化の一方で伝統を守る
そのような国がこれからの国際社会で
信頼を得るのではないでしょうか

途切れず続けることの尊さ
いつも古くていつも新しい
それが神宮のすがたです

それこそが日本の心なのです

外宮の参道口。白装束の方々が行き交う。祭りの参加者のようです。

外宮の参道。深い樹々の間を抜けていく。

奥の正殿の鰹木が輝いている。あそこまでは入れない。

外宮正殿。豊受大御神は衣食住と産業の神様。大切にしなければ。

スーツの人がたくさん。奉納に集まっているよう。

宇治橋をわたる。

水舎。

奉納の列。地元の企業の方々だと思われる。いや、全国からいらしているのか。

宮司さんにお渡しして、飾っていく。バックヤードはお運びで大騒ぎ。

深い森の上から神々しい陽が射し込んでくる。歩いているだけで穢が落ちていきそう。

内宮正殿。3年前の輝きはなくなったが、それでも明らかに空気が違う。そう思わせる建築デザイン、空間演出。お参りのあと、特別参拝をしていた御夫婦を見守った。

御饌の朝粥。左下に隠れているのはアワビのたれで、山椒と一緒にお粥にかけながらいただく。たまにはお粥もいいもんだ。

赤福。セミオープンなファサード設計が秀逸。赤福そのものは名古屋在住時代に食べすぎて現在ではあまり得意ではない。

伊勢といえば、白鷹。

おかげ横丁。このとき17:00ごろ、店じまいの時。30分後には人がほとんどいなくなった。

おかげ横丁。屋台がたくさん出ていて、大賑わい。

夕食に訪れた「鮨 君家」。おかげ横丁内にあって便利。値段も手頃で、珍しいネタも多く感激。アカアシエビ、琵琶湖のワカサギ焼き、黒もずく、サワラたたきなど。

二見興玉神社の夫婦岩。実物は大きくてなかなかの迫力。