2016年の年末、北海道は長万部近くの「上の湯温泉 銀婚湯」に宿を取りました。
降り立った函館の外気温はマイナス6℃。前日まで沖縄出張だったため、実に気温差30℃の日本縦断の旅になりました。ヒートショック起こしそう。
会社を立ち上げて以来、本当に慌ただしく毎日が過ぎていきます。
決算がある年末にはいつも息絶え絶えで「来年はもう今年以上には頑張れない!」と思うのですが、
なんとか自分のバランスを維持しながら、まいとし前年を凌駕する仕事になっているのは大変ありがたいことです。
あらためて、限界は自分で決めてはいけないんですね。
さて、函館駅から電車を乗り継ぎ、漁師町の風景を眺めながら2時間くらい。
「銀婚」の名前の由来は、大正天皇の銀婚式の日に湯が湧いたから、とされています。
9万坪(!)の広大な敷地に、合わせて5本の自家源泉。
内湯、露天、敷地内に点在する貸切野天のすべてが源泉掛け流しであり、溶存成分量も8,000g/kgを越えている非常に濃厚なナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉です。
一番最初に作った露天でもあり、宿の名物にもなっている「トチニの湯」は、宿の敷地内にはあるものの、雪原の中を歩いて10分程度かかります。フロントで長靴を借りて、途中で心もとないつり橋を渡り、林へ分け入り、やっとたどり着きます。
申し訳程度に建てられた門扉を開け、鍵をする。(すぐ脇から門は通り抜けれるので儀式のようなものです)
脱衣のための東屋で手早く浴衣を脱ぎ捨て、雪深い林の中に佇みます。圧倒的な寒さ。
トチニの湯には、ふたつの湯船があります。ひとつはスギの巨木をくり抜いて浴槽にしたもの。もうひとつは石材の四角い露天風呂。5つある源泉のうちここのお湯が最も濃い成分になっていて、ボリューム感のある湯あたりです。
周りには雪と、樹々と、川があるだけ。川のせせらぎ、時折雪の重さで枝が折れる音、温泉の注がれる音以外には、何も聞こえません。北海道の雄大な自然の中、小さすぎる素っ裸のニンゲンがひとり。都会にいると人間ばかりがフォーカスされくたびれますが、これが本来のスケール感ですよね。
湯上りのポカポカが失われないうちに、館まで来た道を戻ります。行きは不安と寒さで遠く感じましたが、帰りはあっという間です。
豊富な湯量を活かした内湯の「渓流の湯」は、流れる川をモチーフにした広々と個性的な湯船。外に出ると、川沿いに設けられた露天風呂。新鮮な源泉ならではのほのかな硫黄の香りが極上です。ちらちらと雪が舞う中、川向こうの山に夕陽が落ちていきます。温泉の気持ちよさもあり、涙が出そうに美しい光景でした。
どのお風呂も、自然の素材を活かした、ほのぼのとぬくもりに満ちた雰囲気が素敵です。
雪国の木こりが少しずつ手づくりしていったような、素朴な世界観。
食事は、北海道の海の幸・山の幸が所狭しと並びます。そもそも素材が素晴らしいので、無理に手を加えることなく頂けるのが嬉しいもの。
ハッカク、ミミノリ、稚ヤマメ、マツカワなど、普段は食べられない食材の出会いもありました。
最後に函館の自由市場で年越しの食材とお土産を買い込み、市場内の「マルシェ」で昼食を済ませます。
ちなみにここのマスターのホスピタリティも最高だと思う。機会がある方はぜひ立ち寄ってみてください。イカ刺し、銀ダラ西京焼、いくら丼など何を頼んでも美味しいです。オーダーすると店を出て、市場へ食材を仕入れに行ってくれます。笑