PIECES OF FUTUREアイディアのかけら

2019.09.28
まちを進化させるフェスティバル、「第0回豊岡演劇祭」。

2019年9月6日、豊岡演劇祭が船出の日を迎えました。
城崎温泉やコウノトリの野生復帰で有名な「小さな世界都市」を目指す豊岡市。ミラノ万博の時をはじめ、東京にいながら何故かちょくちょく地名を耳にする気に掛かるエリアでした。
豊岡市は、豊岡に移住された平田オリザさん率いるこの演劇祭を「まちづくりのための演劇祭」として位置付け、産官学で連携しながら地方経営のいろんな課題解決につながるトライアルを実装したものにしようとしています。地元企業・団体はもちろん押しも押されぬ日本の大企業も複数参画していたりと、どこかとてつもない可能性を感じさせてくれます。

2020年の第1回を視野に入れながら、2019年は規模を抑えた第0回としていろんなチャレンジ、シミュレーションが盛り込んでありました。
今回はやや急ぎ足の2泊3日、演劇だけでなく山陰の食の魅力も盛り込んだ行程に。
ほぼSNSへポストした文章ですが、以下にまとめて掲載しておきます。サイドの写真と合わせて現地の雰囲気を感じ取ってもらえればと思います。


[9/6(金)18:00 城崎温泉・小林屋旅館とをり鶴にて]
夕方の羽田発の便に乗り、伊丹空港経由で但馬空港へ17:30着。その後タクシーで25分、城崎温泉へ。
少しずつ日が落ちてくる中、温泉街では浴衣着にからんころんと下駄の音が響き始めます。川沿いのしだれ柳が風に揺れてなんとも言えない風情。
観劇のあとに外湯で汗を流して、鮨をつまんで、みたいなのはここだけのとっても贅沢な過ごし方かも。

城崎温泉に来たなら絶対に立ち寄りたいのが老舗鮨店「をり鶴」。密かに通ってますがとっても素晴らしいです。三代目は銀座久兵衛で修行されたとのことで江戸前握り。カウンターで魚の話を聞きながら頂けるのは僕にとっていちばんの贅沢でありがたく幸せです。(ほんと面倒ですみません)
山陰の地物がほとんどで、東京ではなかなか見かけないものばかり。城崎温泉というと冬のカニがまず第一に思い浮かぶけど、それ以外のシーズンもヒラマサやシマアジの青背魚、ヨコワ、あこう(キジハタ)、トリ貝など相当に楽しめます。
城崎温泉の鮮魚店がこれまたとってもクオリティ高いので素材はどれも間違いなく一級品。

[9/7(土) 12:00 城崎温泉・海中苑にて]
午前中は公演がなく、起き抜けまんだら湯での朝風呂のあとは山陰の食めぐり。
9月の山陰といえば底びき漁解禁、ハタハタの水揚げスタート。
とにかく昨晩からずっとハタハタを食べている。握り、塩焼き、唐揚げ、煮付け。すでに何尾食べただろう。
山陰に足を運ぶようになって一番感動したのがハタハタかもしれない。噛んだ時にジュワッと口の中にひろがるスープとプリプリコリコリした食感がとても小気味よく、ハタハタが朝どれで食べられる土地の人がすごく羨ましい。
演劇観ている時間だけが演劇祭というわけでもなく、お目当てのプログラムの合間で、豊岡の数えきれない魅力を堪能できるのもこの演劇祭の特長かもしれません。

[9/8(日) 13:00 出石からのバスにて]
城下町出石に移動。明治34年開館、近畿最古の芝居小屋・永楽館で『柿喰う客』の公演。演劇のためだけのスペシャルな空間、圧倒的な熱量とスピード。我を忘れるカンゲキ。
豊岡駅まで戻るバスの車窓、黄金色に色づき始めた田園風景を見ていた。乗客みんなけっこう見ている。
「コウノトリが飛んでるかもしれない」、豊岡にいる時にはいつもそんな気持ちがどこかにある。両翼広げて2mもある巨鳥、日本では一度いなくなってしまった自然再生のシンボルが、すぐそこらへんを羽ばたいてたりする。そんなまちは他に知らない。
見かけると、御利益というか、何かいいことがありそうな気がして、ついつい探してしまうのだ。

但馬空港へのアクセスはプロペラ機で35分の空の旅。伊丹から出ている昼便・夕方便のみで、一度に50名くらいしか乗れないので早めの予約が必要。

夕暮れ時の城崎温泉。川沿いに立ち並ぶ温泉旅館に灯りがともり、なんとも風情ある温泉街の雰囲気に。浴衣に下駄でカラコロ歩く海外観光客、若者グループ、非日常をみんなで楽しんでます。

温泉街の商店はどこも夜がピークタイム。外湯めぐりの途中でお土産を物色したり、懐かしの射的を楽しんだり。

ハートをがっしり掴まれてしまっている「をり鶴」。今年の春にKIAC田口館長に紹介して頂いて以来、すでに昼夜合わせて4度目の訪問。二代目は明石の名店「菊水」で、三代目は銀座の名店「久兵衛」で修行されたそう。

9月から底引き漁が始まり、シーズンがスタートしたハタハタ。山陰に足を運ぶようになって一番感動したのがハタハタかもしれない。噛んだ時にジュワッと口の中にひろがるスープとプリプリコリコリした食感が非常に小気味よく、漁場が近く、ハタハタが朝どれで食べられる土地の人がすごく羨ましい。

豊岡市をゆったりと流れる円山川、そこで獲れた天然のうなぎ。どこも同じだけど円山川の漁師さんは高齢化が進み担い手が減る一方。この夏に城崎温泉に入ってきたのはわずか4本とのこと。握りで頂いたが、天然ならではのワイルドなムチムチ感がたまらない。

3月に来た時の写真。円山川は四万十川に少し似ていて、河口から中流域まで高低差がほとんどなく、低い山の間を縫うように流れていくゆったりとした川の表情がお気に入り。

大好物のヒラマサ。青背ではシマアジもブリもカンパチも好きだけど、一番の好みを挙げるならヒラマサ。一部の釣り師の間では「青背の貴公子」と呼ばれているとのこと。

ハタハタの白子をさっと煮付けたもの。濃厚だけど、さっぱり。

サワラの炙り。東京ではなかなか生で食べられないサワラ。フンワリした身質がとっても大好き。

シメサバ。臭みは全くなくフレッシュな仕上がり。脂の乗りっぷりもお見事!

8月下旬に城崎へ来たとき、近くのOFFで初めて食べたのがコシナガマグロ。さっぱり目な赤身だけどビンチョウみたいに柔らかく、独特のうまみもあってなかなか気に入った。をり鶴でもこの日仕入れていたので、細巻きで頂きました。

2日目の朝、「まんだら湯」で朝風呂。普段は15:00からしかやっていないんだけど、「御所の湯」が改装中で休館ということもあって7時からのオープンに。

カバン屋さんの2階にある温泉街を眺めるカフェ。豊岡の主産業のひとつが柳行李をルーツとするカバン作り。吉田カバンなど日本を代表するブランドのOEMなどを請け負っているそうだ。

昼食は城崎温泉駅近くの「海中苑」へ。有名な魚屋さん「おけしょう鮮魚店」の直営。

生ハタハタの唐揚げ。一夜干しになっていないハタハタは産地ならではの味覚。

生ハタハタの塩焼き。個人的には唐揚げよりも塩焼きが好み。頭から丸ごと食べられる。エラのあたりのコリコリ感が夢中になる。

城崎温泉駅から徒歩20分、城崎国際芸術センター(KIAC)ヘ。トヨタのパーソナルモビリティ・コムスが控えています。演劇祭期間中は城崎温泉エリア内でレンタル可能。

メインプログラム「東京ノート・インターナショナルバージョン」開演前。第0回と言いながら、この人数!全席売り切れです。

日高のカフェがフード。ドリンクを提供。前夜のアフタートークでは「コウノトリ育む米」のおむすびも出されたそうです。

テレビ局の取材も入っておりました。

豊岡市内のろ路線バスが今どこにいるかをリアルタイムで把握できるサイネージも。アプリ版もありました。乗り継ぎ案内とかがさらに進化すれば地域交通がかなり快適になりそう。

18時ごろにKIACを出て、宿にいったん戻ります。近くの柳湯でさっとお風呂を済ませ、夕食へ。

まだ今年できたて、西村屋が直営する「さんぽう」へ。建築は羽田空港「ひとしなや」で有名な松井亮氏。

店内の中央にはデザインされた排気塔。木を使った公共建築的な広々とした感じがユニークだ。2階は地域に開かれた休憩所として開放している。

排気塔の下は焼き場。オープンキッチンを囲むようにカウンター席がある。

その場で絞ってくれた醤油。このお皿は底が斜めになっているデザインで面白かった。

こんがりと炙ったアマダイ。海苔のソースで。臭みがなくフンワリ、アマダイの身の香りが引き立ちます。

こんなのが出てきました。ガラスの中は煙がモクモクしています。パッと蓋を取ると…

神鍋マスの瞬間スモークが登場。フワッと柔らかい、燻したての薫りを楽しみます。

但馬牛(たじまうし、経産牛)。脂が気にならず、数あるブランド牛の中でも一番のお気に入りかもしれない。

アナゴの炊き込みご飯。もちろん食べきることができず、お土産にしてもらう。宿を素泊まりにしていたので、明朝の朝食で大変美味しくいただきました。

城崎温泉の街中。外人さんが自然に溶け込んでいます。

城崎温泉駅前、出石行きのバスが演劇祭期間中に臨時運行。

臨時バスの中は演劇祭のお客さんだらけなので、乗客同士の会話も弾むようだ。日本各地の演劇祭を巡っている人もいるようで。

出石のバス停から舞台までご案内!

出石の永楽館。なんと毎年歌舞伎の地方公演も開催されている由緒正しい舞台なのだ。

永楽館、中に入るとこんな感じ。出石の老舗の看板広告に囲まれた空間。舞台のためだけにデザインされた空間は海外からの演者さんにも大好評らしい。

路線バスで出石から豊岡駅へ。コウノトリ育む米は年間を通して水田から水を抜かないことで、コウノトリの冬季の餌となる小魚・小動物類の住処を確保している。

3月に撮影した写真。道路を車で走っていると、突然電柱の上でコウノトリが休憩していることがある。明らかに大きいのですぐにわかるのだ。日本の生物多様性のシンボルとすぐ近くに感じられる、豊岡にしかないスペシャルな体験。