FURUSATO JOURNEY故郷を探して

2017.02.24
ニッポンの故郷「おっこの木」

JR上越線の小千谷駅から車で30分。
若栃という集落にある農家民宿「おっこの木」を訪問しました。
http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/128539/128539.html

築160年の古民家を佇まいをなるべくそのままに、地元の人や有志の学生たちが協同で手を入れ、2010年にオープンさせた農家民宿です。
集落のトーチャン、カーチャン、そして遠く横浜から赴任している村おこしスタッフの方、みんなで協力して運営しているとのこと。
集落のFacebookページもあります。
https://www.facebook.com/Wakatochi/

到着したのは17時過ぎで、すでに辺りは暗くなり始めています。
この日は特産物である注連縄づくりの始まりを決起する会合があったようで、到着した時にはまだ酒盛りの真っ最中。
手拍子でのお囃子なんかも聞こえてきたりして、大層盛り上がっているようです。
冬の間は、注連縄をみんなで集まって世間話をしながら各々のペースで作るんだそうです。全国各地にファンがいて、年々注文も増えてきているのだとか。

重厚な古民家空間に圧倒されていると、女将さんが挨拶に顔を出してくださいました。
再生に至る苦労と笑いの道のり、集落のみんなを巻き込んだ運営の方法など伺いつつ。驚いたのは、なんと知る人ぞ知る皇室ファミリーも宿泊の御予約をされたことがあるのだとか。最終的にはキャンセルになってしまったとのことだけど、それに関する一連のエピソードは大変興味深かったです。こういうところにお泊りになられるんですねえ。
そんな方々も注目する「おっこの木」、地域再生の好例として、全国からの視察が絶えないそうです。宿泊してみると、その理由も頷けます。
雪国の豪壮な庄屋造り建築、そして何よりこの場所を運営する方々のポジティブなオーラ。集落の人たちみんなの趣味のようなものになって、それぞれの心を繋ぐ場所になっているようでした。

夕食は、田舎の山菜料理。料理当番は日替わりで集落のお母さんたちが担当してくれます。その日ごとに家にある食材、収穫できた作物などを自由に持ち寄り、その場で何を作るか相談するそうです。これはまさに新たな価値創造のセッションですね。面白い。限りある食材を知恵と工夫で変化を持たせ、飽きないようにとの心遣いはとても嬉しいものでした。地のものだけで埋め尽くされる食卓は、都会にいては出会えないとびきりのご馳走です。

持ち込んだ地酒でちびちび楽しんでいると、大番頭さんの登場です(先ほどの女将さんの旦那様さま)。
昼から続いた注連縄の会合ですっかり出来上がっています。番頭さんからは、まずゲートボールのルールと面白さを教わりました。簡単そうに見えるがなかなかくぐってくれないんだと。外すとチームのみんなの視線が痛いんだって。なんか面白そう。
続いて、震災の時に避難されてきた南相馬の方々との交流のお話を。広間の神棚の側には、福島に戻った彼らから送られてきた南相馬の歌が飾られています。極限状態にあったはずの南相馬の方々にとって、この集落のぬくもりは大きな支えになったのでしょう。現在も交流は続いているようです。自分の心が逃げられる場所は、多ければ多いほどいいと思う。

都会の人たちを迎え、みんなでワイワイおもてなしをしながら、それがこの集落の人々にとってもささやかな生きがいにもなっている。
自分の集落にいながら、日本中、世界中の人たちが遊びに来てくれるのだから。
そのホスピタリティは、リゾートホテルとか高級旅館とは全然違う、とても素朴で距離が近いものでした。
それは純度が高く、ニヒリズムを感じさせない。都会にはなかなかないもの。

興味がある方はぜひ訪れてみてください。
特に都会で頑張りすぎた後、自分を取り戻すためのしばしの息抜きに、オススメします。

到着するとすでにあたりは暗闇。集落の高台に位置する立派な家。

玄関。

注連縄工房、とあるのが決起会をやってらした団体さん。

玄関をくぐったところにある土間。古民具がぎっしり。

壁の存在感が圧倒的。全て無垢材ですって。

地元産の注連縄が飾られた神棚。

大番頭のご主人。楽しく地元の活動を紹介してくれました。

地産の野菜を使った煮物。車麩が美味しい。

イトウリをマヨネーズで和えたもの。これを機にすっかりイトウリファンに。

蒸したサトイモ。ほっこり美味しい。それにしても味の好みって変わっていくものだなあ。

翌朝の若栃集落。高台にあるので眺めが良い。田んぼに朝日が差し込んで綺麗。

夜は見えなかった看板。

外観。

陽が差し込んだ室内もまた美しい。

神棚下の襖の奥には隠し階段がある。ここから登れる二階にも宿泊できるそう。

到着時には宴会が行われていた広間。奥の方には囲炉裏があるのが見える。風通しが良く夏でも涼しそうだ。