FURUSATO JOURNEY故郷を探して

2024.05.05
残雪の尾瀬十帖

4月末に尾瀬十帖のプレオープンにお邪魔させてもらいました。
尾瀬十帖がある銀山平は不安になるほど長い長いトンネルを抜けた先にある山間の秘境です。
あの環境で精一杯を超えたホスピタリティ。旬どんぴしゃの野生とシンプルに向き合った料理。すぐ隣にある白銀の湯は40℃くらいの源泉掛け流しぬる湯。大自然の中でのゆたかな時間と体験に癒されました。
唯一、今年異常発生のカメムシには手を焼きましたが夏に向けて収まってくるはず。

今ぼんやりとあの滞在を思い出すとき、あそこが「行き止まりの場所」であることと、そこで暮らす人たちのぬくもりに満ちた交流の風景が浮かんできます。あの集落より先は車道がなく、山にも囲まれ、あまりの雪深さに冬前には集落ごと閉鎖されてしまうそうです。冬はそれぞれの場所で過ごして、雪溶けの頃にまたあの小さい集落に集まって、半年と少しの限られた時間を一緒に過ごす。春の再会は嬉しいだろうし、秋の別れは名残惜しいだろうなあ。
一緒にいる時間を大切にしたいと思うこと。終わりがあるからこその優しさもあること。
季節がめぐるから、人と人はつきあっていけるのかもしれません。

3日間ずっと見ていた光景があります。客がはけた昼間になるとシェフが篭を持って集落を歩きだし、道端の山野草を摘んだりしながら、集落の方々と談笑している。美味しい食べかたを教え合ったりしているのかな。郷土料理ではどうするか。フレンチだったらどうしてみたいか。日々移り変わっていく風景と生命のようすに話題は尽きないように思います。

2つの宿を受け継ぎ誕生した尾瀬十帖は、今までにない若さと時代のエネルギーをこの集落に注ぎ込んでいる。
銀山平の土地と人々にとって、とても大切な宝物ができたように映りました。
僕たちビジターは、そんな宝箱の片隅に少しの間だけ混ぜてもらえるわけです。いい時間をお裾分けいただきました。

まだ残雪が残る尾瀬。ヤマザクラの鮮やかさが際立ちます。白と緑と水色とピンクの風景。

集落には小川が流れます。分棟のログハウスがかわいらしい。こじんまり、のんびりした空気が漂います。同じ道だけど毎日ゆっくり散歩したくなる。

集落にはそこら中にふきのとうがいっぱい!滞在中にも残雪の後退に合わせて次々と顔を出していました。

初日の夕食。外の焚き火でよもぎもちを焼くところからスタートします。火にかざすとぷくーっとふくれてきます。気を抜くと焦げます。熱々が美味しい。

山小屋っぽいメインダイニング。オープンキッチンで、中央の焼き窯では炎がメラメラしています。

ふきのとうのフリット。と、枝のように見えるうちの2本はグリッシーニ。わかります?

メニューには山菜が盛りだくさん。覚えている範囲で、うるい、しおで、ふきのとう、こしあぶら、せり、あぶらこごみ、こごみ、木の芽、みず、わらび、たらのめ、あんにんご、ぜんまい。

山菜のサラダ。シンプルだけどめちゃくちゃ野生を感じられる美味しさ。味付けも最小限でとっても好み。

ふきのとうのパスタ。もちもち。

蕪を米粉で包んでまるごと窯で焼いてくれたやつ。軍手が活躍。

窯で炙ったおにぎりをお茶漬け風に。上には新鮮なのぜり。味付けは塩とお出汁だけでいたってシンプル。びっくりするぐらい美味しかった。

山菜たっぷりの朝食。左下にある「山汁」には地元猟師さんが捕えたウサギ肉が。滋味深く美味しい。

鉄鍋で炊いてくれる「おりたて米」。「折立」という集落で育てた魚沼産コシヒカリ。

区画内にはフリースペースもある。合宿会議とか、連泊時の気分転換にも使えそう。同じ建物内には小さめだけど温泉もあり。

2日目の夕食。
山菜あれこれのフリット。

つくしの炊き込みご飯。

中日の朝食はパンにしてくれました。フォカッチャと菊芋のスープ。

3日目はあいにくの雨。集落を朝からしっとり霧が包み込みました。

3日目の夕食。きのこの春巻きが乗っているのは、ここらで発掘された縄文石器。欲しい…

山のアスパラ、しおで。ちなみに漢字で牛尾菜って書くのだけどいつも読めない。

魚も出してくれました。ウスメバルのローストをスープ仕立てにした感じ。

豚の上に乗っているのはあんにんご。ふわっと柔らかい香り。

窯焼きのピザ。うるいをどっさり乗せてくれました。ざくざく。
笑顔がまぶしい支配人の丹所さんは滞在中ずっと細やかに気を配ってくれました。ガムテープたくさん使っちゃってすみません。感謝!

せりのおじや。これまた感激のうまさ。

実はこのときなんと里山から武田さんがわざわざ顔を出してくださった。会社の10周年と誕生日のお祝いまでしていただき恐縮しきり。ほんとありがとうございました。

最後の朝食は再び和食。実はのびる味噌が大好物なんです。

そして衝撃的に美味かった木の芽のおひたし。卵黄をくずして、炊き立てのおりたて米に乗せて。感激。
(帰宅途中の道の駅で木の芽を調達して、自宅でもトライしました。やはり美味しかった。)

青柳シェフが見せてくれた発酵部屋。いろんな実験を企んでいるようです。楽しみ!