4月末に尾瀬十帖のプレオープンにお邪魔させてもらいました。
尾瀬十帖がある銀山平は不安になるほど長い長いトンネルを抜けた先にある山間の秘境です。
あの環境で精一杯を超えたホスピタリティ。旬どんぴしゃの野生とシンプルに向き合った料理。すぐ隣にある白銀の湯は40℃くらいの源泉掛け流しぬる湯。大自然の中でのゆたかな時間と体験に癒されました。
唯一、今年異常発生のカメムシには手を焼きましたが夏に向けて収まってくるはず。
今ぼんやりとあの滞在を思い出すとき、あそこが「行き止まりの場所」であることと、そこで暮らす人たちのぬくもりに満ちた交流の風景が浮かんできます。あの集落より先は車道がなく、山にも囲まれ、あまりの雪深さに冬前には集落ごと閉鎖されてしまうそうです。冬はそれぞれの場所で過ごして、雪溶けの頃にまたあの小さい集落に集まって、半年と少しの限られた時間を一緒に過ごす。春の再会は嬉しいだろうし、秋の別れは名残惜しいだろうなあ。
一緒にいる時間を大切にしたいと思うこと。終わりがあるからこその優しさもあること。
季節がめぐるから、人と人はつきあっていけるのかもしれません。
3日間ずっと見ていた光景があります。客がはけた昼間になるとシェフが篭を持って集落を歩きだし、道端の山野草を摘んだりしながら、集落の方々と談笑している。美味しい食べかたを教え合ったりしているのかな。郷土料理ではどうするか。フレンチだったらどうしてみたいか。日々移り変わっていく風景と生命のようすに話題は尽きないように思います。
2つの宿を受け継ぎ誕生した尾瀬十帖は、今までにない若さと時代のエネルギーをこの集落に注ぎ込んでいる。
銀山平の土地と人々にとって、とても大切な宝物ができたように映りました。
僕たちビジターは、そんな宝箱の片隅に少しの間だけ混ぜてもらえるわけです。いい時間をお裾分けいただきました。