FOOD FOR CREATIVE頭を遊ばせる時間

2022.09.28
シリーズ 懐かしの郷土食(2)

2回目です。
インスタの方にアップしていた郷土食の記録をこちらにも。
数回に分けてご紹介していきます。(過去記事から再登場のものもあります)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

琵琶湖編
「イサザのじゅんじゅん」
また食べたい度☆☆☆☆(4/5)

琵琶湖八珍のひとつ、イサザです。
先日紹介した舞鶴のイサザはシロウオの地方名ですが、こちらは別の魚で琵琶湖の固有種です。どちらもハゼ科なのは変わりません。
ひとことで言えば肉が手に入りづらかった時代にイサザを代わりに使ったすき焼きなのですが、それでもやっぱり「じゅんじゅん」と呼ぶのがすてき。料理の名が食味を表すとはこのことではないかと思います。土鍋で「じゅんじゅん」と炊き込まれ、あつあつはふほふと頬張る感じもなんとなく「じゅんじゅん」という響きを想像させます。
あと、僕、ハゼ科っていうかこういう顔立ちがなんか大好きなんですよね…。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

西伊豆編
「潮かつお丼」
また食べたい度☆☆☆☆(4/5)

西伊豆に伝わる「潮かつお」という伝統食材があります。丸の鰹を塩に漬け込み、乾燥させた保存食ですね。

僕は熱海が実家なのですが、ある年の正月に帰った時に玄関にまるごとの潮かつおがぶら下がってて仰天した覚えがあります。父が潮かつお作りの体験教室受けてきたらしく。けっこう強烈なニオイなんですよね…。自宅での解体作業の写真を載せておきます。
そうとうカチコチになってるんですが、炙ってほぐしてうどんと和えた「潮かつおうどん」や、同じようにお茶漬けにした「潮かつお茶漬け」が最近では観光客にも人気だそうです。

次の写真は西伊豆の「海鮮焼 かねじょう」さんで出会った「潮かつお丼」。潮かつおを七輪で炙って、鰹節を削って、はばのりを敷いたホカホカご飯に乗せる。さらに卵黄を落として、醤油。一気にかき混ぜます。ここでよく混ぜるのがポイント。
潮かつおの奥深い塩味に炭火の香ばしさが加わり、さらに卵黄が全体にマイルドさをプラス。知る人ぞ知る、という感じの絶品漁師メシです。かねじょうさんもマニアックなお店で非常に◎。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

熊本編
「しいばの煮付け」
また食べたい度☆☆☆☆☆+(5/5オーバー)

熊本で寄らせてもらった「和食 舟徳」さんで遭遇しました。
「しいば」は熊本の地方名。標準和名はヒイラギ。関東ではほとんど食べられず、西日本では珍重される地域がちらほらあるようです。

子供のころ、釣りに行くとヒイラギがたくさん釣れることがありました。しかし嬉しかった記憶は全くなく。この魚、強烈な粘液を出すんです。釣れた後にバケツやクーラーに入れようものなら、もうすべてがネバネバに。もちろん手もタオルも釣り道具もネバネバ。当時は刺身でも焼きでも美味しいイメージはなく、いつしかすぐにリリースするようになっていました。

さて、時は過ぎ、大人になって煮付けで食べてみると抜群に美味しいではないですか。大きさは、いつも大漁だった手のひらに収まるくらいのサイズ。ネバネバはまったく気になりません。頬張ると、繊細だけど適度な繊維質に、うま味もしっかり。こってり系の煮汁も合ってます。

自分の味覚ももちろん変わっただろうけど、やっぱ普段から食べられてる地域だと、食べさせ方の洗練度合いが違うなあと思いました。ああ、もう一度食べに行きたい。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

大阪編
「半助豆腐」
また食べたい度☆☆☆(3/5)

「半助」は鰻の長焼きの頭の部分。関西での呼び名。
関東では頭を落とした背開きで焼くけど、関西は腹開きで頭を残す。武家社会の関東は切腹を想起させる腹開きを避けて、商人社会の関西は腹を割って話すの意で腹開き、と言われてます。

関西では長焼きを楽しんだ翌日とかに半助を豆腐や野菜と一緒に煮込んで惣菜にしたようです。まろやかないい出汁が豆腐にも染み込んでいい味になってます。半助自体は骨だらけなので、少し残った身を齧ったりしゃぶったりするくらいなのですがそれもまたいい感じです。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

北茨城編
「どぶ汁」
また食べたい度☆☆☆☆☆(5/5)

北茨城の超絶あんこう料理、「無水どぶ汁」です。
土鍋でまずはあん肝を炒り、その後味噌と酒粕を加え、わずかに焦げ目をつけながら火を通していく。その後ゼラチン質たっぷりなあんこうの身(ヒレ、エラ、皮なども一緒に)を加えて炒め、最後に野菜を加える。あとは数分煮込んで完成。この間加水は一切なし。
あんこうの身と野菜から出る水分だけでつくるとんでもなく濃厚な鍋料理。普段食べる鍋とは完全に別物です。海上で水が使えなかった漁師が大根と味噌だけ持って船に乗ってつくっていたのがルーツという。これぞ大発明。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

八戸編
「七子八珍会席」
また食べたい度☆☆☆☆(4/5)

青森県といえば「七子八珍」。
青森が誇る海の幸をあらわしたもので、その内訳は
「七子(魚卵七品)」…コノコ、タコノコ、ホタテノコ、スジコ、マシラコ、ブリコ、タラコ
「八珍(珍味八品)」…クリガニ、ガサエビ(シャコ)、ナマコ、ウニ、フジツボ、シラウオ、サメ、ホヤ
となっています。覚えるのに苦労しました。

「星野リゾート 青森屋」さんでは、七子八珍から季節のものを厳選して会席で出してくれます。いろいろ食べたいのにはいいかも。小皿でちょっとずつは嬉しいですね。お酒が進みまくって危険です。食事会場は南部曲がり屋の古民家で、ほんと演出がお上手だなーと思います。

ちなみこの後に、「堂々九品」「隠れ十品」が続きます。
「堂々九品」…メバル、アブラメ、イカ、ホタテ、ヒラメ、サケ、タラ、サバ、イワシ
「隠れ十品」…イシナギ、ミズダコ、ソイ、カレイ、ブリ、タイ、アンコウ、マグロ、キンキン、サクラマス
盛り沢山でまだ覚えきれてません。

イサザのじゅんじゅん。

潮かつお丼。削った潮かつおの下には卵黄が。ぐちゃぐちゃに混ぜていただきます。

潮かつおはその場で削ってもらいます。

自家製の潮かつお。すごい潮の香りと存在感です。そしてカタイ…

しいばの煮付け。粉山椒がピリリといい感じ。

しいば(ヒイラギ)。昔はよく釣れました。

半助豆腐。うなぎの頭をガジガジしながら身肉を食べます。あまり食べるところはありません。

どぶ汁の調理風景。肝を煎るところから始まり、身肉を入れて、野菜を入れていきます。

どぶ汁の完成形。

七子八珍懐石。