FURUSATO JOURNEY故郷を探して

2019.06.05
雨上がり、久美浜のとなりで

舞鶴から伊根を抜け、琴引浜のあたりへ出る。
琴引浜近くの民宿に宿をとり、「魚菜料理 縄屋」へ。(本当はいろいろあって『松栄』に泊まりたかったのだけど、いっぱいでダメだった。)
京都・和久博で修行した吉岡幸宣さんは全国にファンを持つ。関東からも、わざわざこちらで食事したいから来た、という方も多くいると聞く。
キンメダイと一緒に出てきた「オオナルコユリ」という山菜を初めて食べたのだが、オクラの粘りとうるいのシャキシャキ感が合わさったようでとても美味しい山菜だった。
終盤にはつい先日青森で食べたトゲクリガニがこちらでも炊き込みご飯で登場。濃厚な味噌系の味のカニだけど、ボイルよりこちらの方が美味しく食べられた。
そのほか、山菜の天ぷら、キンメダイの松笠焼き、ふぐポン酢も軽妙な食感で美味しかった。ジャンルは違えど、三条のUOZEN、紀伊のAiDAとも似た世界観のように思う。どちらも好きな人ならきっと気に入る。

翌日は琴引浜の鳴き砂文化館へ立ち寄り、鳴き砂の原理や山陰の漂流漂着文化に触れる。
鳴き砂の主成分は石英で、キレイな水や空気でしっかり磨かれた状態だと極端に摩擦係数が増えるらしく、この状態で足で踏むと「クックッ」と小気味良い音がなる。意外とというか、驚くくらい大きくハッキリした音。粒子のサイズによってドレミファソラシドも出せるみたい。

この日からの宿は久美浜ホリデーホーム。
北欧ライクなデザインの居室と、特に「雑木林」をコンセプトにした作庭がすごくいい。
ゆったりとした樹間と高中低木のバランス、ひそやかに揺れる山野草。林を抜けた先では久見浜湾が光り輝いている。眺めていて飽きない。

翌朝はひさびさの晴れ間が出て、すぐ近くのかぶと山に登り久美浜湾越しの小天橋を眺める。天橋立を思わせる風景からこの名前がついたらしい。
山陰の日本海側は潟湖や入り江が多くて多彩な海産物が獲れる。豊富な食資源に囲まれて縄文や弥生の時代もさぞ暮らしやすかっただろうと思う。天然の風待ち港にもなったので大陸や日本各地からの船での訪問者が多かった。いろんな文化が混ざり合った場所。「そこに一旦とどまるしかなかった」という交通の都合があったわけだけど、現代でいえばこういうのはどこになるんだろう。空港や駅かしら。でもその待ち時間もどんどんなくなっていった時には、次はどこになるのか。気持ちを準備しなければならない場所とか…。茶会の時に亭主の迎え付けを待つ、露地の中の待合が思い浮かんだ。少しドキドキしながら、客同士で待合で交わすここでの会話もなかなか素敵な時間なのだ。


さて、このまま西へ向かえばすぐに兵庫県。
豊岡を抜けて、浜坂を抜けて、鳥取の岩美へ向かう。

間人(たいざ)海岸、あいにくのお天気。変わった名前の由来は、聖徳太子の母・間人(はしうど)皇后が政乱を避けてこの地に身を寄せた恩のお返しに自らの名をこの地に贈ったとされる。が、住民は「はしうど」と呼び捨てにすることを畏れ多く思い、皇后が退座(たいざ)したのにちなみ間人を「たいざ」と読み替えた、との伝承が残る。

京丹後は網野というローカル駅が最寄りの「縄屋」。田んぼを超えた先にひっそりとある。

わさび漬けとサクラマス。散っているのはわさびの花。

ふぐポン酢。とうとうみが美味しい。

炭火で焼いたクロムツ。ほぼ生でフワフワ。

キンメダイの松笠焼き。隣に添えてあるのがオオナルコユリ。

山菜の天ぷら、カラスミ。この組み合わせは初めてだが山菜のクセにカラスミのねっとり濃厚な味がバッチリ引き合っている。

トゲクリガニのお炊き込みご飯。

抹茶のシャーベット。

鳴き砂文化館。地元の有志で運営されているらしく、手作り感がいい感じの施設。

鳴き砂の汚れ具合によってどう鳴り方が変わるのかを教えてくれる。湿度とかによっても変わるらしい。

ドレミファソラシド鳴り砂。音が低いほうが粒が大きい。

豊岡のKIAC田口館長に教えて頂いたキコリ谷テラス。ちなみにこの日は縄屋さんのイベントがあったらしく、顔を合わせてお互いにびっくり。

山の中にぽつんとあるイマドキおしゃれカフェ。ちなみにこの直前に立ち寄った峰山駅前のとあるカフェが最高にガチャガチャした空間(大音量でB'zのベストアルバムと野球中継が流れていてタバコの煙でモクモク)だったのでめちゃくちゃ癒された。

外のテラス席はティピみたいなテントになっていた。虫と鳥と風の音しかしなくて、かなり快適。

久美浜まで移動してホリデーホーム。建築は北欧とか蓼科にありそうなモダンロッジ風。窓から覗く雨上がりの新緑がビビッドで、どちらかというとそちらが主役かもしれない。

部屋は素足でぺたぺた歩く。民宿とか舟屋の宿が続いたのでこの清潔感とシンプルさがうれしい。

夜になると庭にはシカやイノシシも登場するそう。夜間は気をつけてください、とのお言葉。

低中高木のバランス感と草花のレイアウトが秀逸に思う。眺めていて飽きない庭。

レストランより。大窓がきもちいい。空間はシンプルで品よく、自信ある作庭を主役にしっかり魅せる。

この細長いレストランの感じはベラビスタを思い出した。

利休梅の花が落ちて、なんかドラマチック。季節ごと、日々変わっていく仕掛けがあちこちにされていることだろう。

朝食プレート。野菜が多くてうれしいがお腹いっぱい。パンの入る余地なし。

翌朝、数日続いた雨が上がった。近くにある兜山に登り、久美浜湾と小天橋の眺めを目指すことに。生命力に満ちた山の中。シダ系植物がここぞとばかりにぐんぐん伸びていた。

精気に満ちた林を歩くタマムシ。ぜんぶキラキラしている。

やっと頂上!久美浜湾を見下ろす。海水と淡水が入り混じる汽水湖。環境のグラデーション部分にはたくさんの生命が宿る。

写真中央に横に伸びる一筋のラインが小天橋。自然が作り上げたドラマチックな風景。見にきてよかった。

トンビがゆく。ピューーーっと、気持ちよさそう。

豊岡駅前の何かがそそられる市場。ここを進んでいくと小料理屋や蕎麦屋も現れる。お気に入りの場所。

豊岡から神鍋に向かい、田口館長に教えて頂いた風穴庵で昼食。地元では有名なとろろ飯のお店。

古民家風。伊豆の河津七滝、「隠れ家レストラン ひぐらし」を思い出した。http://7daru.com

GWということもあり中は大混雑。ご年配の方が多い。

お通しに栃餅が出される。食後にほおばると田舎っぽい素朴な風味で懐かしい気持ちになった。

このとろろ飯、かなりのもの。特に粘りが強い地産品種のとろろだと思う。近くに行ったらまた食べたい。