舞鶴から伊根を抜け、琴引浜のあたりへ出る。
琴引浜近くの民宿に宿をとり、「魚菜料理 縄屋」へ。(本当はいろいろあって『松栄』に泊まりたかったのだけど、いっぱいでダメだった。)
京都・和久博で修行した吉岡幸宣さんは全国にファンを持つ。関東からも、わざわざこちらで食事したいから来た、という方も多くいると聞く。
キンメダイと一緒に出てきた「オオナルコユリ」という山菜を初めて食べたのだが、オクラの粘りとうるいのシャキシャキ感が合わさったようでとても美味しい山菜だった。
終盤にはつい先日青森で食べたトゲクリガニがこちらでも炊き込みご飯で登場。濃厚な味噌系の味のカニだけど、ボイルよりこちらの方が美味しく食べられた。
そのほか、山菜の天ぷら、キンメダイの松笠焼き、ふぐポン酢も軽妙な食感で美味しかった。ジャンルは違えど、三条のUOZEN、紀伊のAiDAとも似た世界観のように思う。どちらも好きな人ならきっと気に入る。
翌日は琴引浜の鳴き砂文化館へ立ち寄り、鳴き砂の原理や山陰の漂流漂着文化に触れる。
鳴き砂の主成分は石英で、キレイな水や空気でしっかり磨かれた状態だと極端に摩擦係数が増えるらしく、この状態で足で踏むと「クックッ」と小気味良い音がなる。意外とというか、驚くくらい大きくハッキリした音。粒子のサイズによってドレミファソラシドも出せるみたい。
この日からの宿は久美浜ホリデーホーム。
北欧ライクなデザインの居室と、特に「雑木林」をコンセプトにした作庭がすごくいい。
ゆったりとした樹間と高中低木のバランス、ひそやかに揺れる山野草。林を抜けた先では久見浜湾が光り輝いている。眺めていて飽きない。
翌朝はひさびさの晴れ間が出て、すぐ近くのかぶと山に登り久美浜湾越しの小天橋を眺める。天橋立を思わせる風景からこの名前がついたらしい。
山陰の日本海側は潟湖や入り江が多くて多彩な海産物が獲れる。豊富な食資源に囲まれて縄文や弥生の時代もさぞ暮らしやすかっただろうと思う。天然の風待ち港にもなったので大陸や日本各地からの船での訪問者が多かった。いろんな文化が混ざり合った場所。「そこに一旦とどまるしかなかった」という交通の都合があったわけだけど、現代でいえばこういうのはどこになるんだろう。空港や駅かしら。でもその待ち時間もどんどんなくなっていった時には、次はどこになるのか。気持ちを準備しなければならない場所とか…。茶会の時に亭主の迎え付けを待つ、露地の中の待合が思い浮かんだ。少しドキドキしながら、客同士で待合で交わすここでの会話もなかなか素敵な時間なのだ。
さて、このまま西へ向かえばすぐに兵庫県。
豊岡を抜けて、浜坂を抜けて、鳥取の岩美へ向かう。