POWER OF SPRING温泉力をもらいに

2018.01.03
忘れたくない秘湯・青根温泉「不忘閣」

過日訪れた、宮城県は青根温泉の「不忘閣(ふぼうかく)」。
仙台駅から高速バスで1時間ちょっと。意外とアクセスに優れた秘湯だ。

ずっと前から気になっていた場所で、ここの「不忘」というフレーズがすごく人の心をつかむなあと思っていた。
由来は伊達政宗が湯の素晴らしさに「この地忘れまじ」と言ったことからこの名がついたとか。

大きな蔵の中に作られた殿様の湯といった風情の「蔵湯」、かつて共同浴場だったという「大湯」。
どちらも他にないスペシャルな空間。源泉100%かけ流しの単純泉も香り、適度なボリューム感で、よくからだにしみわたる。

滞在中、時期的にはだいぶ早い雪が降った。
庭にある伊達家の別邸・青根御殿は、雪化粧でなんとも風情がある景色に。
部屋の窓から伊達な造りの御殿を眺めるのもなかなかにして壮観である。

部屋の窓枠が歪んでいて、「わずかに」とは言えない隙間が常時開いていた。
部屋が半屋外状態だったのも今となってはいい思い出だ。こんなところでウチとソトの境界が曖昧になるとは。
綿の掛けふとんを三枚重ねて、やっとのことで暖をとった。さすがに重くて夜中にうなされた。
あと、カメムシたちとかなり仲良くなったことも付記しておく。

ともかく、玄妙という言葉がぴったりな、ずっと忘れたくない秘湯だった。

仙台駅で立ち寄った「塩竈 すし哲」。昼間から酒呑みたちで賑わっていた。メニューには珍しい仙台の味覚がずらり。ひがしもの(メバチマグロ)、閖上の赤貝、サンマなどに目を奪われる。

サンマの握り。この年は不漁で痩せ細ったサンマがほとんどで寂しい思いをしていたが、一番の味わい。

仙台駅から高速バスで1時間ちょっと。宮城蔵王ロイヤルホテルで下車後、送迎いただく。10分くらい山道を登っただけで雪景色に。近くにある峩々温泉はさらに雪深いらしい。

「不忘」のフレーズに異様な興奮を覚えるのはなぜだろう。

貸切の「蔵湯」へと続く、大きな蔵が並ぶアプローチ。期待感が高まる。

蔵湯の中へ。高天井の薄暗い空間に、ライトアップされた湯船が浮かび上がる。まさに殿様の湯といった風情で特別感この上ない。よだれをこらえる。

立ちのぼる湯けむりを眺めながら浸かる。なんて気持ちいいんだろう。ちょうど良い湯温と香り、単純泉なので湯あたりしにくい。でもお湯以上に、空間と湯船のパワーを感じる。

部屋に戻ると、中庭にある青根御殿がライトアップされていた。写真だと伝わりにくいが、迫ってくるようなとんでもない存在感である。

一日置きに秋と冬の天候が入れ替わる季節。この日は雪だるまと紅葉のコラボレーション。

白石名物、白石うーめんを冷やで。親孝行な息子が、胃腸の弱い親のために油を使わない麺を考案したとか。つるつる、意外とコシも強く好みの麺だった。お土産決定。

お椀の底には伊達紋。

青根温泉オリジナルの「思手成し酒(もてなしざけ)」。特別純米だったと思う。辛口で好みの味。何本空けたかしら。

朝起きると、いっそう雪が降り積もっていた。なんとも風情のある光景だ。

こちらは「大湯」。かつてはこの地域の公共浴場だったそうだ。一度休業してしまったが、この宿で買い取り、リニューアルしたとか。地域の資産はこうして繋がれていく。

貸切湯のひとつ「仁右衛門の湯」。半屋外でひやりとした風が心地よかった。

頭が良くなる温泉とのこと。

休憩所が充実。青根御殿を目の前に、ストーブを囲んでくつろげる。

休憩所にはいろんなお菓子やおつまみ(茹でこんにゃく)が用意されている。なんと地酒「蔵王」も自由に呑んでOK。ほどほどに。

宿の周辺にはほとんど食事処がないので、連泊の場合は昼食対策が必要だ。唯一近所にあるラーメン屋さんの「ハーブ天ぷらラーメン」。ハーブはパクチーのこと。初めて食べる料理だった。

帰りの仙台駅で、定番のはらこ飯。今年は鮭の不漁でいくらが高騰していて寂しい。