過日訪れた、宮城県は青根温泉の「不忘閣(ふぼうかく)」。
仙台駅から高速バスで1時間ちょっと。意外とアクセスに優れた秘湯だ。
ずっと前から気になっていた場所で、ここの「不忘」というフレーズがすごく人の心をつかむなあと思っていた。
由来は伊達政宗が湯の素晴らしさに「この地忘れまじ」と言ったことからこの名がついたとか。
大きな蔵の中に作られた殿様の湯といった風情の「蔵湯」、かつて共同浴場だったという「大湯」。
どちらも他にないスペシャルな空間。源泉100%かけ流しの単純泉も香り、適度なボリューム感で、よくからだにしみわたる。
滞在中、時期的にはだいぶ早い雪が降った。
庭にある伊達家の別邸・青根御殿は、雪化粧でなんとも風情がある景色に。
部屋の窓から伊達な造りの御殿を眺めるのもなかなかにして壮観である。
部屋の窓枠が歪んでいて、「わずかに」とは言えない隙間が常時開いていた。
部屋が半屋外状態だったのも今となってはいい思い出だ。こんなところでウチとソトの境界が曖昧になるとは。
綿の掛けふとんを三枚重ねて、やっとのことで暖をとった。さすがに重くて夜中にうなされた。
あと、カメムシたちとかなり仲良くなったことも付記しておく。
ともかく、玄妙という言葉がぴったりな、ずっと忘れたくない秘湯だった。