FURUSATO JOURNEY故郷を探して

2018.09.27
南紀すさみ 質感へのこだわり貫く「あきば何求庵」

紀伊すさみ、「あきば何求庵(なんぐうあん)」。きのくに建築賞2017。
南紀にはなかなか心惹かれる宿泊施設が見つからなかったけれど、ここはいかにも個性的で気になった場所。
ホームページからもオリジナリティがばしばし伝わってくる。

周参見の駅から海を背にして、山の方へ集落を登っていく。
細い細い道を抜けた先、山を背中に抱えてひっそりと佇んでいる。

1日に宿泊できるのは2組のみ。
それぞれに趣が異なる2部屋が用意されている。
ちなみに貸切の浴室もコンセプト違いで2つ。

食事はオーナーご自身による手造り。
地元の食材をふんだんに用い、味付けも穏やか。
器のセレクトやテーブルコーディネートにもセンスが溢れ、素晴らしいレベルにあった。

そして何よりもマテリアルづかいが秀逸。
壁も天井も和紙貼りで光の柔らかさが違う。和むけど凛とした表情を持つ日本らしい空間。
無垢の床材はなぐり仕上げで実に立体的。素足で歩くとなんとも心地よい。

目にうつくしいのはもちろん、ふと何気なく触ったところに感動がある。

まさに、これ以上何を求めることがあるだろう。

集落の細い道を抜けた先に見えてくるエントランス。木と石をキーマテリアルにした外構はちょっとした隠れ家のような風情。

玄関に入って、裸足で上がると、足の裏から心地良い刺激が届く。「なぐり」と呼ばれる削り加工を施された床。

天井のあしらい。細木のすだれのよう。どこかアマネムを思い出させる雰囲気。

あちこちに緑のあしらいも。

居室の扉も和紙貼り。手をかけkると和紙の感触が気持ちいい。使ってるうちに汚れてくると思うのだけど、定期的に張り替えてるのかしら。

居室の入り口とベッドルームを遮る間仕切り。

壁天井も和紙貼のベッドルーム。規格の間取りではない、ゆったりとしたオリジナルの空間。

眼下には集落の風景と、すさみの海。庭には水盤がある。春秋とかなら外で朝食、なんてのも気持ち良さそう。

あまり使わなかったけど、和室もある。和紙に写る照明が心地よい空間。

炭もキーマテリアルのひとつ。空気がピンとするのは炭の効果もあるのだろう。

夕食の献立表。全てオーナー手づくり。

先付。

コショウ鯛、トコブシの造り。

日本酒のメニューもたくさん。酒器も選ばせてくれて楽しい。あしらいの葉っぱと合わせて遊びつつ。

海老の揚げしんじょう椀。海老の旨味たっぷりでお上手。この日一番。

天然タチウオのたたき。酢締めになっていて口直しにいい。

活き伊勢海老と魚介の土鍋炊きご飯。パエリアみたい。なかなか期待感を煽るプレゼンテーション。

浴室はふたつ。

写真ではちょっとおどろおどろしいが、ずっしりとした石の質感が面白い。

広々とした浴槽。

浴槽内には炭が沈めてある。なかなか効果が高くて、お湯がぐっと柔らかくなる。

もう一つの浴室。こちらはなんとなく宇宙っぽい雰囲気。柑橘の香りがつけてあるお湯。どっちもいいけど、個人的には黒っぽい浴室の方が好みだったかな。

ラウンジ。建築やインテリアの本、料理の本、郷土の本。そのほかTHANのアメニティが売っていたり。

朝食の会場。窓の向こうには例の水盤が見える。

アジの一夜干しや、手づくりの味付け海苔など。量も多すぎず、味も濃すぎない。ちょうどいい。