JAPAN SENSES日本のすがた・かたち

2015.02.25
「茶飯釜の茶事」 三島・樵隠庵にて

きょうは茶飯釜(ちゃはんがま)というめずらしい茶事にお招き頂きまして
相当にシビれて帰ってきました (足もだけど)

例えば、うーん、宇宙旅行して帰ってきたような感じ?
茶事はやはり究極のコミュニケーションツールであるように感じられます
出会いあり、驚きあり、旨いものあり、笑いあり、涙あり
どこまでも広くて深い そしてタノシイウレシイ

詳しいとこまで書くと膨大すぎて。。(そもそも詳しいことが全然わかっていない)
おおまかな流れだけご紹介 すみません

茶室に入ると、炉では釜に湯が沸いています
おもむろに現れた亭主が懐に携えているのは、ザルの上に「コメ」
まあみんなビックリ こんなのは完全に初めてです
炉から釜を外し、釜の中にコメを入れ、かき混ぜる そしてもう一度炉に戻す
炊飯のお点前という感じでしょうか これはおもしろい

亭主は一度外し 竹筒を持って戻ってきます なんだろ?
どうやら竹筒は炉の炭を吹くためのもの
正客から順に竹筒を渡され、炉ににじり寄って炭を吹くよう薦められます
コメを炊くのにじゅうぶんな塩梅になるまで、みんなで力を合わせて炭を起こします
部屋には障子越しに入ってくる自然光のみ、少し薄暗い
その分、真っ赤に光る炭がおそろしいほど美しい

その後はみんなで炊けるのを待つんです おしゃべりしながら
初めての顔もあるので自己紹介 炭やコメの産地 釜の銘 掛かっている書や香台のこと
少しずつ釜から湯気が立ちのぼり、やがてコメの甘くていい香りが漂ってきます もう少し経つとおこげの香ばしい香りに変わってきます

炊飯の時間は特に決めないのです みんなで相談しながら決めます
そろそろ?まだじゃない?とか言いながら
おこげの香り、湯気の出具合、、それぞれに五感を研ぎ澄まして釜を観察しながら、火から外すタイミングを相談します
ときどき誰かのお腹がグウと鳴ったり、はやく蒸らしに入りたがるせっかちさんがいたりして
この時間がまたオツで楽しいのです

議論が落ち着いて蒸らしに入ると、膳が運ばれてきます
「利休膳」と言うそうです
乗ってるのは先付けでしょうか マダイの刺身です
しっかり熟成されていて柔らかくコクがある深い旨み だし醤油でいただく
続いて椀が出てきます ホタテのしんじょ
これまた上品でうまい フワフワしているが味が濃い

気がつくと亭主が目の前に
「一献いかがですか?」と
盃になみなみと満たされ グイといきます
すぐにマダイを口に運ぶ 日本人でよかった
おっと
すぐまた注がれるので 仕方ないなあ グイグイ

このころ蒸らしが終わり、亭主の手で釜のフタが開けられます
みんなの興味が集中します
開けたとたんに蒸気があふれ、おこげの香ばしい香りが部屋いっぱいに広がる
亭主の「きょうはうまくいったねえ、抜群にうまそうなおこげができてるよ」の一言でみんなのテンションが最高に上がります

すぐに亭主が椀によそったコメが回されてきます すぐ食べる
それだけでうまい コメ自体の甘みと、おこげの香り、炊きたてのみずみずしさ

続いて煮物が出てきます お麩、ニシン、サトイモ、練り物 あとひとつ なんだったっけ?
一つひとつの素材の紹介がはじまります
どれも極上の素材をなるべくそのままに
しかしよく聞くと下ごしらえは大変な手間と時間がかかっている
わざわざこの席のために…有り難いことです
うまさの実感がいっそう深くなります

汁椀も出てきます とろみがある濃厚なお味噌汁 すこし粕の香りがするか
緑色の生麩が目に鮮やか
刻んだフキノトウの苦味が口いっぱいに広がる
もうそんな季節だよなあ

いよいよ終盤
「山のもの海のもの」と伝えられ出てきたのは
タタミ鰯とくるみゆべし
また酒が注がれてしまう しまうとか言って喜んでるんだけど ジャブジャブと

みんなのお酒が終わったころ、湯が回され、茶碗にすこし残しておいたコメにかけ、お茶漬けにしていただきます
こうして器をキレイにして、さいご懐紙でかるく拭き取って膳を下げて頂きます
その後、甘味が出て午前の部は終了
いちど庭に戻って休憩ののち、ふたたび濃茶と薄茶へと続いていきます

シンプルでありながらすべてに手と心が尽くされている
亭主や料理人は数ヶ月前、時には1年も前から
招いた客との想い出や伝えたいメッセージを考えながら
構想や素材の下ごしらえをスタートしているそうです
そのとてつもなく高純度な結晶みたいなものに触れると
ああ、おもてなしの力って本当にすごいなあって
泣けてくるくらいの感動があるのです

床の間の書や一つひとつの器についてなど、かなり端折っている部分もあるのですが
長くなりすぎてるので、いったんここらへんで

お招き頂いた太田先生、宗侑先生に
深く深く感謝です

茶会の招待状。当日はこれと「松の葉」、お菓子をお持ちする。

アーティスト、投資家、建築家、秘書、お茶の先生。そうそうたるメンバー。

迷悟庵。

つくばいへ。