FOOD FOR CREATIVE頭を遊ばせる時間

2022.09.28
シリーズ 懐かしの郷土食(3)

3回目です。
インスタの方にアップしていた郷土食の記録をこちらにも。
数回に分けてご紹介していきます。(過去記事から再登場のものもあります)

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滋賀・琵琶湖編
「鮒寿司の握り」
また食べたい度☆☆☆☆(4/5)

近江八幡の老舗寿司店「ひさご寿し」さんにて。
自家製のニゴロブナ鮒寿司を握りにした一品です。
鮒寿司はなれずしの代表格ですね。
ときどき鮒寿司を食べますが、琵琶湖のすぐ近くで食べるのと、京都・大阪に近づいたのとで、だいぶ味の雰囲気(食べさせ方かな?)が変わるイメージです。
琵琶湖近くだとやっぱ漁師さんの味というか、ワイルドでフレッシュな感じを楽しむ。その一方で特に大阪では洗練されてまろやかなチーズのような。湖水魚の臭みとかは全くなく、ワインとか合いそうな感じです。
ひさご寿しさんの鮒寿司握りはたっぷり抱卵したニゴロブナの鮒寿司を握ったもの。フレッシュでしたが臭みは全くなく、お酒のつまみとして抜群で、とても美味しく頂けました。

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愛媛・宇和島編
「さつまめし」
また食べたい度☆☆☆☆☆+(5/5オーバー)

大好物です。宇和滞在中に二日続けて食べてしまいました。
タイやアジなどを焼いた身に、同じく焼いた麦味噌ともにすり鉢ですり合わせ、さらに火にかけて香ばしさを出す。そこにきゅうりやこんにゃく、ごま、みかんの皮などを混ぜ合わせて、最後ほかほかの麦飯にかけてしっかりかき混ぜて食べるんですね。宮崎の冷や汁に似た感じ。まあこれが素朴でシンプルなんですがうまいことうまいこと…。すっかりハマってしまいました。
名前の由来は諸説あって、「薩摩(鹿児島県)から伝わったから」「夫が妻を助(佐)けて作った料理だから佐妻」などありますが、個人的に一番好きなのは「出汁をかけた時に馴染みやすようご飯を十字に切った。これが薩摩藩の島津家の家紋の形を思わせたから」。最後のが一番好みでした。

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熊野新宮編
「さんま寿司」
また食べたい度☆☆☆☆(4/5)

和歌山県は新宮駅前にある「徐福寿司」さんにて。
熊野灘で獲れる秋刀魚は普段僕たちが塩焼きで食べているような脂の乗ったのとは少し雰囲気が違います。太平洋を南下するとともに適度に脂が落ちて、身が引き締まって旨味が凝縮されてくる。なので、塩焼きとかだとちょっと物足りないというか、味気ないかも。地元の方も塩焼きではほとんど食べないと聞きました。
そんなわけで、この地域では独特の秋刀魚の食べ方が生まれました。近江の方から奈良〜和歌山へと流れてきた寿司文化と融合して、姿の秋刀魚を柚酢で締めて寿司飯を抱かせた「さんま寿司」の誕生です。昔から祭りや正月料理など一般家庭で作られてきたなじみ深いお寿司だそうです。熊野地方では1500年以上もの歴史があるとのこと。
ぎゅっと濃縮した秋刀魚の旨味と柑橘の酸味が引き合ってとても美味しかったです。特に腹側が美味いのでうちでは背開きにしています、というのにも納得。

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京丹後編
「丹後ばらずし」
また食べたい度☆☆☆☆(4/5)

京丹後は網野の「とり松」さんで頂きました。丹後地方のハレの日の郷土料理ですね。かつてはお祭りの日や人生の節目にお母さんやおばあさんが作ってくれたそうです。
特徴としては甘辛く煮付けた「サバのおぼろ」が主役なところでしょうか。そのほかに椎茸、干瓢(かんぴょう)、たけのこ、錦糸玉子、かまぼこなどの具材が乗ります。特にサバが好きな人には是非一度食べてみてほしい料理です。じんわり美味しい。

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四万十編
「ゴリ丼」
また食べたい度☆☆☆☆(4/5)

日本各地でゴリの名は見かけますね。四万十川流域ではハゼ科の魚チチブの稚魚を「ゴリ」と呼ぶようです。
「物事をゴリ押しする」という言葉は、川底に網を押し付けるようにガサガサするゴリの漁法が語源になっています。知らないところで実はたくさんの人に馴染みのある魚。

このゴリ丼は四万十川のほとりにある川魚料理屋「いわき食堂」さんにて。好きなんですよねこういうひなびた感じ。ゴリ丼は甘辛く炊いたゴリをふんわり卵とじにした丼。シンプルだけどハゼ科の魚独特の風味が楽しめます。振りかかっていた川海苔もアクセントになっていてよかったです。

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富山・射水編
「ゲンゲ汁」
また食べたい度☆☆☆☆(4/5)

富山県射水市、新湊きっときと市場にて。
北陸の冬の名物といえば奇魚ゲンゲ(幻魚とも書く)ですね。
分厚いゼラチン質に包まれたボディは超絶ぷるぷるぬるんぬるんの油谷さん状態(古い…)。顔立ちは大きなオタマジャクシといったところ。
ゲンゲ一尾100円、調理代250円で「ゲンゲ汁」をお願いする。ぶつ切りになって汁の中であやしい存在感を発揮するゲンゲ。しかし食べてみれば変なクセもなく幻のように口の中でふわっと溶けていくゼラチン質と、弾力と適度な脂の乗った白身がグッとくる美味しさです。天ぷらや一夜干しもすごくおすすめ。

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伊豆・仁科編
「いか様丼」
また食べたい度☆☆☆☆☆(5/5)

イカ漁で有名な西伊豆町・仁科の「沖あがり食堂」。伊豆漁協の直営店です。
名物の「いか様丼(いかさまどん)」は、短冊切りのイカ刺身、漁師秘伝の漬けダレに漬けた刺身の2種類を酢飯に乗せたもの。酢飯には細かく刻んだたくあんと海苔、大葉、ごまを混ぜ込んであって、なかなか手がかかっている。そして最後の仕上げに卵の黄身を真ん中に落とす。絶対にうまいだろ。
ざっくり混ぜながらいただく。めちゃくちゃうまい。コリコリしたイカの歯ごたえ、卵黄と漬けのまったり感、大葉の爽やかさ、酢飯のごま油の風味が交互にやってくる。これはハマる味。

近江八幡、ひさご寿司で頂いたふな鮨握り。

さつまめし。素朴だけど本当に夢中になる味。

さんま寿司。

丹後ばら寿司。サバおぼろが美味しい。

ごり丼。こういう小魚大好き。

ゆったり四万十川。

ゲンゲ汁。想像よりも癖なく上品なお味。身体もあったまります。

仁科のいか様丼。