春の青森は初めてだった。
北国にはどうも冬に足が向く癖がある…その土地が一番厳しい季節にこそ人々の知恵と工夫、美しさが見られる。長岡時代、そう何度か教わったからかもしれない。
今回はとある展示施設の改修計画の相談があって、現地の視察で訪れる用ができたのだった。
青森空港に降り立ち、リムジンバスに乗って青森市街へと向かう。
途中、ちらほらと残雪、そして伸びやかなふきのとうが目に付く。東京は桜が散り始めだったけど、こちらはまだ春の訪れの時期。
青森の春といえばトゲクリガニ、メバルのイメージ。
青森駅前、アウガの地下に陣取る市場で魚の様子をチェックする。もともとの市場をここにまるごと移設してきたのだ。青森弁でいう「カッチャ」たちが前を通りかかる客に声をかける。(聞き取れない…)
魚種は実に豊富でソイ、ハタハタ、メバル、ヤリイカ、アンコウ、マグロ、タラなどが並んでいる。ナマコも柔らかくてうまそうだ。モズクも地のものが出ている。トゲクリガニもたくさん鎮座していた。
とりあえず腹ごしらえと市場内の食堂で中落ちとソイの二色丼、あとイカ刺しをお願いする。
特産のヤリイカやマグロも美味かったけど、旬のソイのあまりの美味さに震えた。フワッフワでほどよい脂と旨味がグッと乗った白身。イシナギに似てる感じもする。前日の二日酔いがみごとに吹き飛んだ。
話は変わるがアウガといえばコンパクトシティの失敗代表例みたいな不名誉な事例として有名で、商業の採算見通しが甘いままに立ててしまい、開業前に入居予定だった西武が手を引いてしまい、苦肉のテナントも長続きせず、結局今は図書館と役所が入居。
青森駅の近くにはいくつかの施設がある。「ねぶたの家ワ・ラッセ」は大空間の中に過去のねぶたがそのまま展示されている大迫力のミュージアム。世界最高のペーパークラフトと紹介されるのも納得のクオリティ。ねぶたにかける青森の人々の情熱がにじむ大変素晴らしいミュージアムだった。
次に寄ったのがJR東日本が出資する「エーファクトリー」。今のところスーベニアでは日本最強ではないだろうか。ホタテ、十三湖しじみ、嶽きみ、青森カシス、田子にんにく、八戸前沖サバ、ごぼう、長芋、青天の霹靂、南部せんべい、海藻類、りんごやゼネラルクリークなど郷土の食材も魅力的なものが多い上に、商品化やブランディングのセンスもずば抜けてる。
施設も複合型でシードル工場&スタンド、ジェラート、ガレットのレストランが併設されていてうっかり2時間くらい滞在してしまう。
さらに5分くらい歩いたところに青函連絡船「八甲田丸」の内装をミュージアム化したものがある。青函連絡航路が開拓されるまでの苦難や、当時の青森の人々の暮らしを描いている。等身大シーンジオラマがなかなかいい雰囲気。明治・大正・昭和期の古写真もたくさんあって、雪にまみれながら市場で元気に買い出しをする親子の姿があった。
翌日は弘前へ移動。
長岡MANOで知り合い、現在は箱根本箱で腕を振るう佐々木シェフが修行したお店、「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」へどうしても行ってみたかったのだ。
玄関には満席とあったが、終わってみれば客は僕たちだけ。貸切になってしまったみたいだ。
お任せコース、トゲクリガニから始まりキンキン、ウニとフノリのパスタ、馬肉と続いていく。
一番驚愕だったのはサスィーノブランドの赤ワイン。
表現する方法がなくて恥ずかしいが、うっとりする花みたいな芳醇な香り、味わいもジューシーで輪郭のころんとしたミディアムボディ。国産のワインでは今まで飲んだ中では一番美味しかった。弘前以外では箱根本箱に置いているだけだそうだ。これはぜひいろんな人に飲んでほしいワイン。
意外と探索する機会がなかった青森駅、弘前駅の近辺。
じっくり探索できていろいろ発見もありました!