PIECES OF FUTUREアイディアのかけら

2019.02.24
One 〜いのちはつながる〜 (3)

3. 中深層 水深1000m

(魚の大群が離れていったあと、ダイオウイカが深海から浮上して、クジラのそばを泳ぎ始める)

「ダイオウイカ、お前か…何度もケンカしたお前ともいよいよお別れの時が来たようだ…」

「昔は、お互い無茶をやったもんだな」

「あのときつけられた吸盤の跡は結局ずっと消えない…しかし今となっては悪くない思い出だ」

「それにしても、お前たちはつくづく不思議な姿形をしている…進化というのは不思議なものだ…同じ海に暮らしているのにこうまで姿形が異なるとは…」

「私がいなくなると多少張り合いがなくなるかもしれんが…他の好敵手もまた見つかるだろう…お前も長生きしてくれよ」

(ダイオウイカはクジラに軽く触れてから、泳ぎ去っていく)


(岩穴の脇からシーラカンスが顔を出し、クジラのそばへ寄ってくる。何も言わず、そっとクジラの隣を泳ぐ。近くをオウムガイが漂っている)

「長老…いままで世話になった」

「シーラカンスの一族は、はるか古代からの姿や記憶を受け継いでいるという…」

「そういえば昔、海の生物が死について話をしたことがあったな…」

「母さんは"星"になると教えてくれたけど、海のことを何でも知っている長老の話も聞いてみたかったんだ」

「長老はこう言った…『死ぬと星になれるかどうかはわからないが…しかし、誰かの死は必ず誰かの生のためにある…』と」

「いまはまだ…私の死が誰の生につながるのかは分からないが…今日が終わる頃には、その答えもわかるのかもしれないな」

「長老、今までどうもありがとう…いってくるよ…」

(シーラカンスがそっと離れ、クジラは沈んでいく)



5. 漸深層 3000 m

(斬深層では太陽の光ももう届かない暗闇の世界になる)
(沈む先の暗闇にひとつポッと灯りがともる)

「あれはなんだ…?」

「おお、チョウチンアンコウだったか。今日は餌にありつけたのか…?」

(深海に向かって次々とチョウチンアンコウの灯りが続いていく…)

「おお、チョウチンアンコウたちよ…私を導いてくれるのか…ありがとう」


(クジラはそのまま明かりの道を沈んでいく)

(しばらく沈んでいくと、チョウチンアンコウたちが導く先に、キラキラとした2匹の生物が待ち受ける。それはリュウグウノツカイとリュウグウノヒメだった)

「おお、なんと美しい…リュウグウノツカイとリュウグウノヒメよ、私を迎えに来てくれたのか…感謝するよ…」

(クジラに寄り添って2匹が泳ぎ始める)
(しばらく進み、クジラが気がつくと、いつのまにか周りをクラゲの大群が囲んで、竜宮城のように幻想的な世界が広がる)

「おお…なんという美しさだ…」

「ありがとう、リュウグウノツカイたち、そしてクラゲたち…」

「私のこの最後の旅路に、最高のプレゼントだよ…こんな美しい風景がこの世にあったとは…」

「まるで夢のような体験だった。どうもありがとう…」

(リュウグウノツカイ、リュウグウノヒメがそっと離れていき、その場からクジラが沈んでいく様子をみんなで見守る)